ロシアの狙いはウクライナ国家殲滅か…ブチャにポイ捨てされていたガスマスクの不気味
【緊急現地リポート 第13弾】
化学兵器による攻撃はあったのか。5月9日の対独戦勝記念日に向けてロシア軍の攻撃が激しさを増している。南東部の激戦地マリウポリではウクライナの軍事組織が「ロシア軍から毒物による攻撃を受けた」と主張。ロシア側は否定しており真相は不明だが、いつ使ってもおかしくない。プーチン大統領の狙いは、ウクライナという国家そのものを消し去ることだとみられるからだ。どんな苛烈な攻撃を仕掛けても不思議ではない。
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「ロシア軍により壊滅的な攻撃を受けたキーウ北西の町・ブチャを6日に取材した時、驚いたことにロシア軍の物とおぼしきガスマスクが路上に放置されていました」
こう話すのは、首都キーウ周辺で取材し続けるジャーナリストの田中龍作氏だ。ガスマスクはロシア軍の戦車の傍らに捨ててあったという。ブチャでは12日までに403人の遺体が発見されているが、まさか、ロシア軍は既に化学兵器を使っていたのか。化学兵器が発生させる毒ガスを回避するために、ロシア兵がガスマスクを装着したということなのか。
「ガスマスクを使用せずに捨てただけかもしれませんから、実際に化学兵器が使われたかどうかは分かりません。しかし、少なくともいつでも化学兵器を使える態勢にあるということではないかと思います」(田中氏)
東部ドネツク州の一部を支配する親ロ派の民兵組織幹部は12日、マリウポリの製鉄所地下にウクライナ兵が隠れているとし、「モグラを穴からあぶり出すため、化学部隊に頼るべきだ」と言っていた。
「穀倉」「教育機関」を標的に
ロシア軍に残虐兵器を使う意思があるのは間違いない。それに、攻撃対象を見ると、もはやプーチン大統領は、ウクライナという国家自体の殲滅を狙っているとしか思えないのだ。
「11日、キーウから西に47キロに位置するブザヴァ村を訪ねたのですが、驚いたのは、日本で言えば小中高が一緒になったような7~18歳の子供たちが通う学校が破壊しつくされていたことです。ロシア軍が村に滞在した約1カ月間で、100発以上の砲弾が学校に撃ち込まれたといいます。教室の壁には大きな穴が開き、子供たちが使っていた机や椅子は焼け焦げ、原形を保っていなかった。生徒たちは避難できたそうですが、彼らは学ぶ場所を失ってしまいました。国の未来を担う子供たちを狙うとは信じられません。国家そのものを破壊しようとしているのではないか」(田中氏)
日刊ゲンダイは、12日発売号でロシア軍がダムの堤防を破壊し、ウクライナの主要な輸出品である小麦の畑を水の底に沈めた実態を報じた。基幹産業や教育機関への破壊行為は常軌を逸している。
バイデン米大統領は、「(プーチン大統領は)『ウクライナ人』が存在し得るという考えすら一掃しようとしている」と発言したが、その通りなのかもしれない。今後、より危険な攻撃に打って出る恐れがある。