真保紀一郎
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真保紀一郎経済ジャーナリスト

鳥貴族ホールディングス(上)均一価格298円→319円へ 5年前の値上げ時は客離れで業績悪化

公開日: 更新日:

「焼鳥屋鳥貴族」を全国で615店舗展開している鳥貴族ホールディングス。

 その最大の売りは、100%国産鶏肉を使用した焼き鳥を含めた全商品を298円(税込み327円)で提供していることだ。しかしこのほど、4月28日から全商品を319円(税込み350円)に値上げすると発表した。

 今、日本にインフレがひたひたと忍び寄っている。資源高に円安、それにウクライナ情勢など地政学的要因も加わり、消費財の値上げが相次いでいる。外食でも牛丼大手3社が揃って値上げするなど、コスト負担に耐えられなくなっている。

 鳥貴族の場合は国産鶏肉にこだわっているが、飼料などは輸入に頼っているため、それが鶏肉価格に跳ね返る。

 そうした状況下で「今後も変わらず食の安心・安全を担保し、お客様に手作りの料理や元気な接客を提供し続けていくためには(中略)コストの上昇を吸収していかなければならないと考えています」(同社ニュースリリースから)と、値上げの理由を説明する。

 これは大きな賭けだ。5年前の2017年10月、鳥貴族は280円均一から298円均一へと値上げした。この時は人件費上昇がその理由だったが、結果として客離れが起き、19年7月期には上場以来初の赤字に転落した。今回の値上げはその時よりも値上げ幅、値上げ率ともに大きいのだから、前回以上の反動が起きてもおかしくない。

 加えて今はコロナ禍の真っ最中。中でも居酒屋業界は壊滅的打撃を受け、閉鎖店舗が相次いだ。先日も個室居酒屋を展開するアンドモアの自己破産申請が話題になったばかりだ。

 鳥貴族も例外ではなく、20年7月期、21年7月期と赤字が続いた。今期は上期こそ黒字に浮上したが、今年1月からコロナの第6波が押し寄せ「まん防」が実施されたため、通期で黒転するかどうかは微妙なところだ。

自信の表れとも…

 そんな中での値上げなのだから、無謀なギャンブルにも思えてくる。その一方で業界関係者の中には、「鳥貴族の自信の表れだ」と評価する声もある。

 居酒屋の中でも特にコロナ被害が大きかったのは、「何でもあるか何もない」という特徴のない居酒屋だ。そのため業界首位のワタミは居酒屋から焼き肉屋への業態転換を進めている。

 一方、鳥貴族のように、専門化した業態は、被害は大きかったが、回復は比較的早かった。

 その証拠に感染者数が少なかった昨年12月の既存店売上高は、前年比55%増、コロナ前の前々年12月比でも8割の水準だ。当時、鳥貴族では約半分の店が閉店時間を早めていた。しかも、コロナ前のような大人数の忘年会需要が激減していることを考えると、驚異的な回復力といっていい。

 また、前回の値上げの影響も、19年7月期こそ赤字転落したが、20年7月期は「コロナさえなければ史上最高益になるはずだった」(大倉忠司・鳥貴族ホールディングス社長)。

 つまり鳥貴族では、コロナ禍さえ落ち着けば業績は回復するし、値上げも受け入れられるとみている。それよりも無理な薄利営業を続け、人件費も上げられずに店が荒れるほうが傷口は大きくなると考えたのだ。吉と出るか、凶と出るか──。 =つづく

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