ウクライナ侵攻「仲介役」でトルコ存在感 プーチン大統領が描く黒海南下ルート“牛耳り”シナリオ
ロシアのウクライナ侵攻を巡り、仲介役を買って出たトルコのプレゼンスが高まっている。ロシアがウクライナ南東部を制圧し、5月には“勝利宣言”を発するとの観測も流れる中、停戦交渉はどんな結末を迎えるのか。
トルコのエルドアン大統領は1日、プーチン大統領と電話会談を実施。プーチン大統領はイスタンブールで行われた29日の停戦協議について謝意を伝え、エルドアンはトルコでウクライナ・ロシア首脳会談を開催したい考えを伝えたという。
ウクライナのゼレンスキー大統領はプーチン大統領との首脳会談に積極的な姿勢を見せている一方、プーチン大統領の反応はベールに包まれたまま。積極的ではなさそうだ。ただ、実現の可能性が浮上してきただけでも、「仲介外交」の成果は大きいのではないか。筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう言う。
「実際に『一時停戦』などの結果を出すことができたら、ノーベル平和賞モノですが、プーチン大統領とゼレンスキー大統領が直接会談する可能性は極めて低いでしょう。ウクライナの立場を巡り、プーチン大統領は『停戦』という言葉を発していないし、むしろ停戦交渉を口実に戦火を拡大しているフシがある。とはいえ、仲介役のトルコが中東でのプレゼンスを高めているのは確かです。アジア・中東・ヨーロッパをつなぐ要衝として、国際社会にアピールする狙いでしょう」
花を持たせて物流ルートを確保
ロシア軍はウクライナの首都キーウの攻略から方針を転換し、戦力を南東部に集中している。親ロシア派勢力が実効支配するドンバス地方からクリミア半島をつなぐ一帯を掌握するため、南東部マリウポリを制圧するのが狙いだ。マリウポリは「陥落間近」との分析もある。
「結局、プーチン大統領のやっていることは帝政ロシア時代の『南下政策』と同じです。ロシアにとって、アゾフ海へと注ぐドン川は大動脈。その周りには工業地帯が広がっています。将来的に工業製品を運ぶルートを確保するため、アゾフ海を実質的にロシアの海にして、アゾフ海から黒海、地中海へとつながる物流ルートを確立したいのです。だからこそ、アゾフ海への要衝であるマリウポリにこだわっている。最終的にプーチン大統領はトルコに仲介役として花を持たせ、トルコと共に黒海から南下するルートを牛耳るシナリオを描いているのではないか」(中村逸郎氏)
停戦交渉を進めながら攻撃を続け、ウクライナ南東部を制圧、5月に“勝利宣言”──。プーチン大統領のもくろみ通りになってしまうのか。