大丈夫なのか?「バブル崩壊」も「高金利時代」も知らない世代の不動産購入
最近マスコミからよく受ける質問として「今後、不動産価格はどうなるのか?」というものがあります。東京の新築マンションの住宅価格は収入の13倍にまで高くなっています。これに対する私の回答は単純で「さらに高くなる可能性より、下がっていく可能性の方がはるかに高い」というものです。
その理由は複数ありますが、そのひとつは、もうこれ以上、金利が低くなりようがないということです。1億円を超えるような湾岸エリアのタワーマンションを誰が買っているのかといえば、何か特別な職業の方というわけではありません。例えば年収1000万円と年収600万円のご夫婦が夫婦合算で借り入れ可能な住宅ローンは今や1億円を優に超えます。
ご存じのように、現在、日銀による市中銀行に対する金利はマイナスであり、結果、住宅ローン金利も史上最低となり、これ以上下げる余地はなくなっています。
もう1点、これは不動産業界だけの問題ではありませんが、日本においては就労人口、つまり統計上15歳から64歳までの労働者の人口が既に急激に減っていっているからです。
家を買う年齢に適齢期など存在しないのかもしれませんが、現実的には30歳から50歳のゾーンの方々が中心になると思われます。日本の人口ピラミッドにおいては一番厚みがある層は団塊の世代です。その次が、その団塊の世代のお子さんたち、つまり団塊のジュニア世代の方々です。この団塊のジュニア世代の人口ピークが今や40代後半となっており、50代に迫ってきています。この世代の下の層は長年の少子高齢化の影響で急激に細ってくるのです。つまり「需要の減少」です。モノの価格は最終的には需要と供給のバランスで決まります。不動産業界も既に始まっている需要の長期的な減少に大きく影響を受けることになるでしょう。
住宅ローン金利は今後も上がらないのか?
今は「異常なほどの超低金利政策」というカンフル剤が効いた状態です。一方、こういった背景を知ってか知らずか、結構な金額を長期のローンを組んで購入する方の意識として「金利は今後も半永久的に上昇しない」「住宅ローンが払えなければ物件を売って返せばいい」といった考えの方も多いようです。
さて、果たして住宅ローンの金利は今後も本当に上がらないのでしょうか? 不動産も上昇前提での購入で大丈夫なのでしょうか?
ご存じのように、世界中で資源高、食料高によるインフレが既に始まっています。米国を筆頭に各国の中央銀行は今後の利上げを堂々と公言しています。日本でもさまざまな分野でインフレが起きています。あの黒田日銀総裁の任期もいよいよ来年4月となりました。おそらく同氏のように独自の路線を表情も変えずに実行できる方は、この日本にはもう存在しないと思われます。
不動産バブル崩壊も、高金利も知らない世代の判断が将来厳しい結果をもたらすのではと危惧しています。なぜならば、これまでも歴史は同じことを繰り返してきたからです。「借りられる金額が返せる金額ではない」といった事実も過去の歴史が何度となく証明しています。