寿命は必ず訪れる「旧耐震マンション」は建て替えどころか、延命化すら厳しい現状
コロナ禍でもマンション価格は高騰と報じられ、築古物件も値上がりする中、気になるのが1981年に引き上げられた耐震基準(新耐震)より前の基準で建てられた、いわゆる「旧耐震」マンション。大地震の際には「命を奪う倒れ方をする可能性がある」とされる。
全国のマンションストック約676万戸のうち、旧耐震のマンションはおよそ103万戸ほど(2020年度)あるが、その時期にあたる築40年以上の4割ほどが定期的に大規模修繕工事が行われていない可能性がある(18年度マンション総合調査から)。その数ざっと40万戸──。仮に耐震補強をしてもいずれ寿命が来るため、その前に建て替えなどが検討されるが、老朽化マンション全体の10%も建て替えは実現できそうにないという。
「総戸数約50戸のマンションのコンサルを引き受けた際に建て替えの見積もり額を試算したところ仮住まいの費用なども含めて1戸当たり8000万円ほど。建て替えが進まないのは、費用を工面できないのが第一の理由です。自費で建て替えられるのは富裕層が暮らす超一等地の物件だけ。また都心の再開発などによる容積率緩和で総戸数を3倍程度増やすことができる場合には、少ない自己負担で建て替えできます。そもそも、所有者の5分の4の同意が必要なため、建て替え可能なのはほんの一握りです」(マンション管理コンサルタント・土屋輝之氏)