小糸製作所株の買い占めでトヨタにケンカを売った男の言い分
この国にはKEIRETSUと横文字にもなっている系列会社の問題がある。清水一行はそのものズバリの『系列』(角川文庫)で、日産自動車と市光工業らしい関係をモデルにこれを描いている。
「東京自動車」系列の「大成照明器」で、工場の独身寮にクーラーを入れようとした。それに銀行出身の専務が反対する。
「たとえ入れるにしても、東京自動車の関連会社対策室におうかがいを立てなくちゃ。多分贅沢だって言われるでしょう」
こうしたことでいちいち「おうかがいを立て」ないと、合理化不足のネタにされるのである。
世界の注目を浴びたのがトヨタの系列の小糸製作所の筆頭株主にブーン・ピケンズ(2019年死去)率いるアメリカのブーン社がなったことだった。1989年春に発行済み株式の2割から3割近くも保有され、小糸およびトヨタはあわてる。
「日本の大企業は株主に対してアロガント(傲慢)ですね。下請け業者や流通業者、金融機関、さらには政府にまで影響力があるものだから、株主など、まるで召使いみたいに扱われがちです。日本では消費者物価が国際水準よりはるかに高い。従って企業利潤も大きく、株主への配当も多いはずなのですが、そうではない。本当の自由競争が行われている市場社会では、こんなことはあり得ません」