有森隆
著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

「シマノ」過去最高益で株価急騰! 欧米でのサイクリングブームが追い風に

公開日: 更新日:

 自転車ロードレースの最高峰、ツール・ド・フランス2021が6月26日から7月18日まで開催された。出場した23チームのうち17チームがシマノのコンポーネント(複合自転車部品)を採用した。使用率は74%に達した。

 シマノは世界中の自転車メーカーにブレーキ、ギア、変速機などを供給している。

 部品を個々に開発するのではなく、ブレーキから変速機まで一つのシステムとして完成されているのがシマノの特徴だ。一刻を争うレースでは、速くて確実な操作が勝負を分ける。高性能のギアとブレーキで、シマノは65%のシェアを持っている。

 株価が10月27日、一時10%(3190円)高と急騰した。コロナ禍でサイクリングだけでなく釣りブームが世界的に起こり、21年12月期第3四半期決算の営業利益が前年同期比でほぼ倍増。7月に続いて2度目の業績の上方修正を行ったことが好感された。

 通期予想の売上高は5150億円(従来予想を150億円アップ、前期比36.2%増)、営業利益は1355億円(110億円上乗せし、同63.8%増)とした。いずれもアナリストの市場コンセンサスを上回った。

 3月に創業100周年を迎えたのを機にトップが交代した。社長の島野容三(73)は在任20年となり、節目の年に若返りを図った。6代目社長の島野泰三(54)は創業者の孫で、容三のいとこ。新たな100年に向けて指揮を執る。

 新社長の島野泰三は「世界の自転車市場は19年比で4~5割拡大した」と語る。密を避ける移動手段やレジャーとしてスポーツ自転車への関心が高まった。満員電車を避けて自転車で通勤する新たな行動様式が定着した。アジアでも中高級クラスの自転車の需要が増えた。

 懸念材料もある。アジアの部品工場では、感染対策の徹底を図るために人員の削減が行われ、ロックダウン(都市封鎖)、電力制限による工場の稼働率低下の影響をモロに受けた。

 このため、世界的に急増する需要に供給が追いつかない状態が続いた。高級スポーツ自転車を中心に供給が間に合わず、自転車全体の品薄感を招いた。

「新たな100年のキーワードはCASE」

 シマノは対策として大阪府堺市や下関市など国内の生産拠点の生産量を金額ベースで5割引き上げた。200億円を投じ、シンガポールに新工場を建設。22年下期に変速機などの生産を開始する。

「新たな100年のキーワードはCASEだ」(新社長の島野泰三)

 Cはコネクテッド、Aは自動化、Sはシェア、Eは電動化の頭文字。CASEは自動車業界の技術革新を示す言葉だが、独自動車部品大手のボッシュが10年、電動アシスト自転車向け部品の生産に参入するなど自転車業界を巻き込んだ変革が起きている。

 代表権を持つ会長兼最高経営責任者(CEO)に就いた島野容三は新社長の喫緊の課題にDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進を挙げる。「コロナ禍でデジタル化の遅れを痛感した」と警鐘を鳴らす。堺市の本社部門のテレワークの比率は2割にとどまる。

 自前主義を貫いてきたが、CASEに向けて他社との連携が、より重要になる。(敬称略)

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