有森隆
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有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

次世代全固体電池の量産に乗り出す村田製作所は脱炭素のトップランナー目指す

公開日: 更新日:

 電気自動車(EV)や太陽光発電などの普及とともに蓄電池市場の急拡大が見込まれる。日本政府が2050年、温室効果ガス排出ゼロの目標を打ち出したこともあり、脱炭素の機運が高まってきた。

 現在、主流のリチウムイオン電池の次の本命と目されているのが全固体電池である。リチウム電池とは異なり、内部の電解液を固体にして出力を上げるのが特徴。エネルギー密度が高まり、発火のリスクが低いという利点があるとされる。欧米の自動車メーカーを中心に、世界中で車載電池への投資が過熱している。

 積層セラミックコンデンサー(MLCC)で世界シェアトップの4割を占める村田製作所は、次世代の電池技術の確立に取り組む日本を代表する企業だ。海外売上高比率が91.6%(21年3月期)で、文字通りグローバル企業だ。

 22年3月期中に、安全性に優れた全固体電池を量産化する。野洲事業所(滋賀県野洲市)に量産ラインを設置し、イヤホンなどウエアラブル端末向けに供給を開始する。

 17年、ソニーから買収した村田製作所の電池事業が本格的に離陸することになる。ソニーは1991年、福島県郡山市で、世界で初めてリチウム電池を量産した。その工場が現在、東北村田製作所になっている。

 MLCCで培った積層技術を使ってリチウムイオン電池の大容量化を実現。蓄電システムなどに活用される、発火しにくい高性能の「FORTELION(フォルテリオン)」を生産している。

 電池事業自体は買収後も赤字が続いている。旺盛な需要に対応するための増産投資がかさんでいるのが理由だ。全固体電池など新製品の立ち上げが、さらに重荷になる。電池事業が黒字になるのは22年3月期の予定だったが、先送りされた。

 21年3月期にリチウムイオン電池の販売戦略を大きく転換した。価格競争の激しいスマホ向けを縮小し、電動工具などのパワーツールやウエアラブル端末向けに重点的に投入する。社長の中島規巨は4月28日の決算説明会で「赤字幅は大幅に縮小した。戦略は間違っていない」と力説した。

2050年までに全事業所で使う電力を再エネに

 業績は好調だ。22年3月期(米国会計基準)は純利益が2710億円と2期連続の最高益を見込む。

 中島は20年6月、非同族で初の社長に就任し、電池事業の黒字化に取り組んでいる。村田製作所は故・村田昭が1944年、京都市で元染物工場を借りて、碍子などを製造したのが始まり。1代で、セラミックコンデンサーで世界のトップシェアに立った。

 第4代社長に就いた中島は85年、同志社大学工学部を卒業し、村田製作所に入社。技術畑を歩み、生産子会社の社長などを経て、12年、事業本部長に就任。新製品の開発や量産化を進めた。

 世界的な脱炭素の流れの中で、工場で使う電力を再生可能エネルギーに切り替える動きが加速している。村田製作所は今月から、生産子会社の金津村田製作所(福井県あわら市)を再エネ100%とする。駐車場にはカーポート型の太陽光発電設備を完備する。

 2050年までに全事業所で使う電力を再エネにする方針。中島は10月12日、金津村田製作所で、「(再エネの)100%達成の道のりは長いが、世界中の自社施設で、積極的に対応を進める」と抱負を語った。脱炭素のトップランナーになる意気込みである。 (敬称略)

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