有森隆
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有森隆ジャーナリスト

30年余、全国紙で経済記者。豊富な人脈を生かし取材・執筆中。「『ゴーン神話(マジック)』の終焉 日産を覆う不安の正体」(「月刊現代」2006年12月号)、「C・ゴーン『植民地・日産』の次の獲物(ターゲット)」(同09年1月号)などを執筆。「日産 独裁経営と権力抗争の末路――ゴーン・石原・川又・塩路の汚れた系譜」(さくら舎)を3月に上梓。

キングジムは24年ぶりの最高益 アルコール噴射器「テッテ」がコロナ禍でヒット

公開日: 更新日:

 コロナ禍において常にアルコールで手指消毒する衛生習慣が広まった。

 事務用品メーカーのキングジムが開発した自動アルコール噴射器「テッテ」は、手をかざすとセンサーが感知して消毒液が自動噴射する。本体に触れることなく手指を消毒できる。2019年2月に発売したが、新型コロナウイルスの感染拡大により需要が高まり、20年以降、事業者向けに売り出した。

 コロナ対策として、飛沫防止用の巻き取り式フィルムパーティションなど、ユニークな新製品を送り出している。

 市販されているスプレーボトル入りの除菌用アルコール消毒液に対応した足踏み式の専用スタンドは、ボトルに触れることなく消毒液を噴射できる。UV除菌ケースはスマートフォンやマスクを入れて数分間で除菌できるコンパクトなケースだ。

 社長の宮本彰(67)は経営者のインタビューサイト「リーダーナビ」でこう語る。東建コーポレーションの100%子会社が運営しているサイトだ。

「コロナウイルスの蔓延やペーパーレス化の加速など、当社にとっては逆風と感じることもありますが、チャンスだとも思っています。なくなっていく需要もたくさんありますが、世の中が一気に変化し、新しい需要も生まれているからです」

 21年6月期の連結決算は売上高が前期比8.6%増の363億円、純利益は同81.5%増の19億円。24年ぶりで最高益となった。

 祖業は文具関連製品だが現在はラベルシールを印刷する「テプラ」などの電子製品の売り上げが5割を占める。事務用ファイルなどの文具の比率は3割弱。家具・家電、雑貨が2割である。

 1927(昭和2)年、宮本英太郎が「特許人名簿」と「印鑑簿」を発売したのが始まりだ。宮本彰は創業者を祖父に持つ4代目社長。77年、慶応大学法学部を卒業し、キングジムに入社した。

 80年代に入り、事務用品の電子機器化が急速に進み、「会社が傾くのではないか」との危機感が社内に満ち満ちるなか、当時、常務の彰が小型ラベルプリンターの開発を強く進言した。

 彰は父である3代目社長の宮本浩三に「(電子文具が)売れないと最悪で5億円ぐらい損が出るかもしれない」と率直に見通しを述べた。当時の経常利益は10億円ほど。父は「それだったら会社は傾かないからやってみろ」と背中を押してくれた。

「シングルヒット」はいらないと社員にゲキ

 88年、小型ラベルプリンター「テプラ」を発売。初の電子文具は、一躍、大ヒット商品に化けた。92年4月、彰は4代目社長に就いた。

 新しい商品の開発に果敢に取り組む社風が醸成された。開発理念を表す言葉として「ファーストペンギン」を掲げる。ファーストペンギンとは「餌を取るために群れを離れて、天敵がいるかもしれない海に最初に飛び込むペンギン」といった意味だ。彰は「最初の一歩を踏み出す勇者でありたい」と胸に誓った。

 厚型ファイル「キングファイル」の累計販売冊数は5億冊、ラベルプリンター「テプラ」は同1000万台を超える営業の2本柱だ。文字入力に特化した携帯端末「ポメラ」や手書きメモをスマートフォンでデータ化できるノート「ショットノート」など“スマホ時代”の商品が揃っている。少子高齢化で文具市場が縮小するのは避けられないが、発想の転換とアイデアで業績を伸ばしてきた。

 斬新な商品を次々と生み出す開発本部に「10回打席に入って9度三振してもいいから、10回目でホームランを狙え。シングルヒットはいらない」とゲキを飛ばす。

 家具や雑貨とシナジー効果が見込める企業のM&A(合併・買収)を考えている。サステナビリティー(企業の持続性)担当役員を新設するなど“次の手”を忘れていない。(敬称略)

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