有森隆
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有森隆ジャーナリスト

30年余、全国紙で経済記者。豊富な人脈を生かし取材・執筆中。「『ゴーン神話(マジック)』の終焉 日産を覆う不安の正体」(「月刊現代」2006年12月号)、「C・ゴーン『植民地・日産』の次の獲物(ターゲット)」(同09年1月号)などを執筆。「日産 独裁経営と権力抗争の末路――ゴーン・石原・川又・塩路の汚れた系譜」(さくら舎)を3月に上梓。

エレクトロニクスの雄「ソニーグループ」は娯楽企業に転身 初の純利益1兆円の大台に

公開日: 更新日:

「東京ゲームショウ2021」(9月30日~10月3日)が千葉市の幕張メッセで開催され、ソニーグループの家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」で遊べるゲームソフトが多数紹介された。ソニーは今、PS5に最も力を入れている。

 ソニーグループに社名を変更した初めての定時株主総会が6月22日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。

 会長兼社長CEOの吉田憲一郎は、品薄状態が続いているPS5について、「来年度は供給を加速し、PSの歴史において過去最大となる年間2260万台以上の販売を実現したい」と力説した。巣ごもり需要を背景に、初代PSの1998年度の販売記録の更新を目指す。

 業績は絶好調だ。21年3月期連結決算(米国会計基準)は純利益が20年3月期比で2倍の1兆1717億円となり、初めて1兆円の大台に乗せた。

 5月26日、オンラインの経営方針説明会で吉田は「ゲームや音楽などのエンターテインメント分野を軸に、顧客基盤を1億6000万人から10億人に拡大する」中長期の経営方針を示している。エンタメ事業を成長の柱と位置付ける姿勢を鮮明にし、24年3月期までの3年間で2兆円の戦略投資枠を設定。知的財産(IP)ビジネスや先端技術の開発、自社株買いに振り向ける。

 傘下の米ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は6月16日、インターネットで音声コンテンツが聴ける「ポッドキャスト」の番組制作会社、サムシンエルス(本社ロンドン)を買収した。米国向けのみだった音声番組制作事業をグローバルに広げる。

 ゲーム子会社のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は6月にフィンランドのゲーム開発会社ハウスマーク、7月にオランダのニクセス・ソフトウエア、9月には英ゲーム開発会社のファイアースプライトを傘下に収めた。PSシリーズ向けソフトの開発力を底上げする。

路線転換を支えた金融ビジネス

 今、怒涛の勢いでM&Aに突き進んでいる。

 吉田は数値目標を語らない代わりに、「感動」という言葉を多用する。彼が参謀役を務めた平井一夫前社長時代から掲げる経営ビジョンである。

 平井はパソコンなど数々の事業を売り払い、テレビの分社化など、ソニーのルーツであるエレクトロニクス分野のリストラに大なたを振るった。

 音楽畑出身でゲーム事業で頭角を現した、「エレクトロニクスを知らない男」平井の改革には、ソニーの社内外から大きな反発が起こった。

 ソニーの黄金時代を築いたOBたちの反発はすごかった。何度も本社に乗り込み、平井を面罵し、直接、退陣を迫ったOBもいたという。

 平井がソニーの次なる時代の旗印に掲げたのが「KANDO(感動)」だった。グループの総力を、ユーザーに感動を与えるような製品やサービスの創出に注ぐという、実にシンプルな目標設定をした。

 吉田は、平井路線を踏襲した。平井改革の司令塔が吉田だったから当然の流れである。

 ものづくりから、感動路線への転換。路線転換を強力に下支えしたのが金融ビジネスだ。20年9月、金融持ち株会社ソニーフィナンシャルホールディングスを100%子会社に組み入れた。金融関係者の間から「ソニーはものづくりをやめるのか?」といった驚きの声が上がった。

 映画やゲームは水モノである。当たれば大きいが、失敗すれは大赤字になる。

 グループ横断の資産を活用する感動の経営の真価が問われるのはこれからである。(敬称略)

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