日大のドンにも迫る“Xデー” 田中理事長は3000万円を受け取ったのか…特捜部が2度目のガサ入れ
「日大のドン」は立件されるのか、Xデーはいつになるのか――。
日大医学部付属板橋病院の建て替え計画に端を発した、国内最大のマンモス大学をめぐる不透明な金の流れが徐々に明らかになってきた。
東京都内の設計会社から流出した2億2000万円は、医療法人「錦秀会」(大阪市)の前理事長、籔本雅巳容疑者(61)が全株式を所有する都内のペーパー会社に送金され、そこから1億円が籔本容疑者本人の口座に移された。読売新聞によると、この直後、日大の理事だった井ノ口忠男容疑者(64)の指示で、ペーパー会社に残っていた1億2000万円から田中英寿理事長(74)に3000万円が渡されたという。
残り9000万円のうち、6600万円が大阪市内の医療法人グループを経由して、井ノ口容疑者の知人が代表を務める会社に振り込まれた。井ノ口容疑者は6600万円のうち、3000万円を別の会社に移動させ、2500万円を受け取ったとみられている。複雑なルートをたどり、田中理事長、井ノ口容疑者、籔本容疑者が手にしたとされるカネの総額は1億5500万円に上る。
「籔本容疑者は病院建設のコンサルタント契約をしているように偽装工作し、『謝礼』という名目で個人として1億円を受け取っていた。金は遊興費や自宅の改築費用に充てられ、地上3階、地下1階の大豪邸の1階床面積が、300平方メートル強から600平方メートル強に増築されています」(捜査事情通)
東京地検特捜部が3人の自宅を家宅捜索したのは、先月上旬のこと。約1カ月後の今月7日、井ノ口容疑者と籔本容疑者は背任でパクられたが、田中理事長だけは逮捕されず、7日、田中邸に2度目の家宅捜索が入った。
側近、井ノ口容疑者の供述次第
「同時逮捕が原則なので、もし証拠があれば田中理事長を逮捕したはずですが、背任の共犯を実証する明確な証拠を得られなかったのでしょう」と、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士がこう続ける。
「逮捕されていない田中理事長の自宅を2回続けてガサ入れしたのですから、特捜部は相当疑いがあるとみているということです。立件される可能性はありますが、高いとまでは言えません。ただ何らかの証拠があるから、裁判官はもう一度令状を出したのでしょう。井ノ口容疑者があらかじめどこまで理事長に相談や説明していたか、井ノ口容疑者の供述次第です。井ノ口容疑者は自分のことすら話していないといいます。理事長の関与があったとしても、そう簡単に口は割らないと思います」
田中理事長の立件は簡単ではない。例えば「流出した金は個人ではなく、大学で使うためにプールしていたので、大学に損害を与えていない」といった説明が通用する可能性はあるのか。
「不必要な金を外部に流出させ、組織に損害を与えたというのが、背任罪の本質です。容疑者が、会社や団体にとって外部に流出させることが必要で、役に立つと弁解するケースはあります。背任罪は有罪立証が簡単ではないといわれるゆえんです。ただし、個人に金が流れている限り、社会通念上、必要な出費とは認めづらい。これが個人の口座ではなく、大学の別口座、大学の隠し口座などにプールしていたとなると、立件するにはネックになります」(若狭弁護士)
井ノ口容疑者は特捜部の厳しい取り調べに、いつまでダンマリを続けられるか。