東京五輪選手村跡地「晴海フラッグ」は買い物件か? マンション専門家が査定する!
東京五輪・パラリンピック終了から約1カ月。「晴海フラッグ」の再販売が11月中旬から始まる。一応、「選手村だった」ことで付加価値は付いた形になるが、価格は据え置きで販売されるという。果たしてマンション専門家はどうみるか。
晴海フラッグは中央区晴海5丁目の18ヘクタールの敷地に、「SUN VILLAGE」「SEA VILLAGE」「PARK VILLAGE」の3街区があり、総戸数4145戸を有する。11月中旬から販売が予定されているのは、このうち「SUN」の第1期、「SEA」の第2期で、発表済みの前者の予定販売価格は4900万~2億2900万円(約61~116.5平方メートル)。選手村として使われたため、分譲マンションとしてリノベーションを施し、引き渡しは約2年後の2024年3月に予定している。
もともと、19年夏から秋にかけての第1期販売実績は好調だったが、コロナで入居が1年延期されるなど混乱が生じた。
住宅ジャーナリストの山下和之氏が言う。
「20年1月時点で、成約に至った住戸は893戸。申込総数は2220組で、平均すると1住戸に対して2組以上の申し込みがあったことになります。人気の高さを物語っていましたし、不動産関係者の間では、販売が中断していなければ昨年中に販売終了するとみる向きがありました。申込者の属性を見ると、中央区22%、江東区14%、港区9%など23区が中心。共働き夫婦にとっては都心に近く、通勤に便利であると同時に、晴海フラッグ内に保育園から小学校、中学校まで揃っているのが人気の要因でした」
だが、最寄り駅の都営大江戸線「勝どき駅」まで遠く、メインの足は東京BRT(バス高速輸送システム)になる。
マンション購入を予定している人にとって「買い」なのか。
■坪単価290万円台から300万円台は格安
「晴海フラッグの価格は周辺相場よりかなり安いのは事実。選手村として利用することを前提に、東京都が土地をかなり安く売却したことが大きい。周辺の三井不動産『パークタワー勝どきミッド』は坪単価450万円台、コンパクトタイプの日鉄興和不動産『リビオレゾン勝どき』が420万円台。それに対して、晴海フラッグの平均は290万円台から300万円台で、価格面から見れば、明らかに“買い”です。大規模な都市計画に基づいて街づくりが行われており、ディンクスからファミリー、シニアまで住みやすい街であることは間違いないでしょう」(山下和之氏)
駅から「徒歩20分」の資産価値は?
問題はやはり駅から20分程度かかる点だ。売却時の「資産価値」を考えると周辺マンションを勧める専門家もいる。
不動産コンサルタント「さくら事務所」の長嶋修氏が言う。
「最寄り駅から徒歩7分以内の『駅近』物件が“買い”です。たとえば、東京都心7区(中央区、千代田区、港区、新宿区、渋谷区、目黒区、品川区)では、中古マンションの成約単価は駅から徒歩1分離れるごとに下落率が大きくなります。2013年は1平方メートル8000円でしたが、5年後の18年には1万8000円になっています。価値が維持できる境界が7分といわれています」
■ライバルは「パークタワー勝どきサウス」「シティタワーズ東京ベイ」
そこで目線を変えてみると、勝どき駅徒歩2分の「パークタワー勝どきサウス」(11月上旬第1期2次販売予定=入居2024年4月下旬)も注目だ。
姉妹棟の「パークタワー勝どきミッド」は坪単価450万円台だが、こちらは若干ではあるが価格が抑えられている。それでも最多価格帯8600万円台(85平方メートル)とされる晴海フラッグと違い1億円は超えてくるが、周辺のタワマンである徒歩6分の「THE TOKYO TOWERS」、駅直結「勝どきビュータワー」が共に販売時価格を上回る形で中古売買されている現状を見れば、「資産性」の面でも期待できる。
また、豊洲駅から徒歩4分の「ブランズタワー豊洲」(10月上旬販売開始=入居2022年5月下旬)もライバルとなりそう。プレミアムフロアを除く部屋の平均坪単価は約400万円台。徒歩2分の距離に「アーバンドック ららぽーと豊洲」と「昭和大学江東豊洲病院」があり、公園も充実している。
さらに価格と資産性のいいとこ取りなら、勝どき駅徒歩10分の「ベイサイドタワー晴海」(11月上旬販売開始=入居2024年4月下旬)も魅力的だ。近くには晴海トリトンスクエアがあり、専用シャトルで新橋まで移動できる。
一方、「シティタワーズ東京ベイ」(先着順申し込み中)はりんかい線「国際展示場駅」から徒歩4分、またはゆりかもめ「有明駅」から徒歩3分。大型商業施設「有明ガーデン」に隣接し、「有明四季劇場」も9月にオープン。実際にオリンピック競技に使われた施設も近くにあり、スポーツとエンタメの融合と話題になっている。
「晴海フラッグについての価値は、東京オリ・パラ開催の有無は関係ないでしょう。聞くところによると、購入希望者も『オリンピック選手村だったから』という人は少ないようです。2012年以降、都心では新築マンションの価格が上昇の一途をたどり、60平方メートルを切る物件も多くなる傾向にありました。そんな中、晴海フラッグはそこそこの広さと値ごろ感がありますので、高い人気とまではいきませんが、十分に買い手はつくと思われます」(長嶋修氏)
オリンピックのレガシー効果を期待してはいけないが、再販売のスタートと同時に話題になることは確実だ。