有森隆
著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

ヤマトHDは配送業務の「勝ち組」ヤフーのEC全商品を全国で翌日配送へ…課題は配送体制の整備

公開日: 更新日:

 今年は新型コロナウイルスワクチン接種元年である。宅配業界挙げてのワクチン輸送大作戦でヤマトホールディングス(HD)が先頭に立つ。

 米ファイザー社のワクチンはマイナス75度の超低温での管理が求められる。全国の接種会場に円滑に届けられるかが大きな課題となった。

 成田空港に到着したワクチンは、近くの倉庫で保管された後、全国各地の拠点病院に配送される。拠点病院までの配送は国の管轄で、ヤマトHD、セイノーHD、独DHLの3社が担当する。

■宅配便は17カ月連続で前年を上回る

 ヤマトHDの2021年3月期の連結決算は売上高が前期比4%増の1兆6958億円、営業利益は2倍の921億円、純利益が2.5倍の567億円だった。05年の持ち株会社移行後、最高益を更新した。

 巣ごもり消費の盛り上がりで、傘下のヤマト運輸の宅配便取扱個数が17%増の20億9699万個と初めて20億個の大台を突破したのが大きかった。

 今期に入っても快走が続いている。21年4~6月期の連結純利益は117億円と前年同期の3.4倍。電子商取引(EC)の荷物が引き続き好調で、宅配便の取扱個数は同10%増の5億4000万個。宅配便の取扱数量は20年2月以降、21年6月まで17カ月連続で前年実績を上回る。

 ポストコロナ時代に備え、いかに収益を上げるのか、新しい基盤づくりに乗り出した。4月、ヤマト運輸にグループ会社7社を統合。従来7つあった会計上のセグメントを個人利用の宅配便を中心とするリテール、企業の物流を請け負う法人、車両整備などのその他の3つに再編した。4~6月期のセグメント利益はリテール部門が9億円、法人で81億円、その他46億円だった。

 その一方で、不採算事業を連結対象から切り離す。22年1月、引っ越し事業の子会社、ヤマトホームコンビニエンス(YHC、東京・中央区)の株式の51%を引っ越し大手、アートグループホールディングス(大阪市、非上場)に売却する。

 YHCは単身者向けの引っ越しや大型家具の配送をやっているが18年、四国統括支店と123の営業所で代金の過大請求が発覚。国土交通省から事業改善命令を受けた。

 YHCは19年9月から単身者向けの引っ越しだけを再開したが、受注は低調なまま推移している。

 21年3月期の事業別業績では、引っ越し業務のホームコンビニエンス事業が唯一の赤字(56億円の赤字)だった。

64年ぶりにロゴマークを刷新

 ポストコロナの時代、電子商取引がビジネスの主戦場になる。

 Zホールディングス傘下のヤフーは24年度までに電子商取引で、注文を受けた商品を翌日までにほぼ全国で配送できる体制を整え、ヤマトとの連携を深める。

「ヤフーショッピング」「ペイペイモール」に8万店が4億アイテム以上の商品を出品しており、ヤマト運輸が商品管理や受注、出荷などの配送業務を一括して請け負う「フルフィルメント」のサービスを始めた。ヤマトが関東と関西に整備した倉庫を使う。

 業界第3位のヤフーはアマゾン、楽天を追い上げ「20年代前半に首位を目指す」(ZHDの川辺健太郎社長)。

 配送業務の勝ち組、ヤマトは64年ぶりにロゴマークを刷新。親ネコが子ネコをくわえた新しい絵柄の使用を4月1日から始めた。次の100年に向けた新たな動きの象徴として、アドバンスマークと呼ぶ新たなマークも開発した。

 ヤマトの宅配便取扱個数は初めて20億個を突破したが、22年3月期は23億個まで増えるとみている。全国で翌日配送という、どこも成し得なかった取り組みを成功させるためには、人材の確保など安定した配送体制の整備が急務となる。

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