有森隆
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有森隆ジャーナリスト

30年余、全国紙で経済記者。豊富な人脈を生かし取材・執筆中。「『ゴーン神話(マジック)』の終焉 日産を覆う不安の正体」(「月刊現代」2006年12月号)、「C・ゴーン『植民地・日産』の次の獲物(ターゲット)」(同09年1月号)などを執筆。「日産 独裁経営と権力抗争の末路――ゴーン・石原・川又・塩路の汚れた系譜」(さくら舎)を3月に上梓。

日本KFC HDは12四半期連続プラス 復活の仕掛け人はプロのマーケティングウーマン

公開日: 更新日:

 日本に上陸して50年の節目を超えたケンタッキー・フライド・チキンが、コロナ禍に、かつてない好業績に沸いた。

 日本KFCホールディングス(以下、KFC)の2021年3月期の連結決算は、売上高が前期比13%増の896億円、純利益は同83%増の28億円と大幅な増益となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、消費者の持ち帰り需要を上手に取り込み、ファミリー層向けにパック商品「シェアボックス」などを投入したことが奏功した。QR決済を全店に導入し、非接触での支払い方法の選択肢を広げたことも支えとなった。

 居酒屋やファミリーレストランなど多くの外食企業が不振を極め、KFCも商業施設内の店舗を中心に臨時休業し、全店で原則イートインを中止した。

 こうした逆風をはねのけ、21年3月期の既存店売上高は13.6%増と2ケタの伸びを記録した。既存店売上高は18年7~9月期から21年4~6月期まで12四半期連続でプラス成長を続けている。

 業績好調の原因を探ってみた。もともとKFCはテークアウトが販売の中心で以前から同比率が7割。店内での売り上げよりも比重が大きかった。

 もうひとつは全店の37%にあたる421店(6月末時点)でドライブスルー方式を導入していることだ。店内に入らず、ほかの来店客と接することなく商品を買えることから飛躍的に利用が拡大した。

“コンビニチキン”の殴り込みに一時は完敗…

 KFCは古くから親しまれてきた。1970年3月、日本万国博覧会にKFCインターナショナルが実験店を出店したのが初お目見えである。同年7月、三菱商事とKFCコーポレーションの出資により日本ケンタッキー・フライド・チキンを設立。90年8月、東証2部に上場。14年4月、日本KFCホールディングスに商号を変更し、持ち株会社体制に移行した。

 KFCの牙城に殴り込みをかけたのがコンビニだった。ファミリーマートが01年10月、店内にフライヤーを導入したのが皮切り。ローソン、セブン―イレブンもフライドチキンに参入。レジ横に置かれた“コンビニチキン”は快進撃を遂げる。KFCは天敵の“コンビニチキン”に完敗した。

 18年3月期に業績が急激に悪化したため、三菱商事出身の社長、近藤正樹(当時)はマーケティングのプロの中嶋祐子を招いて再建を託す。

 中嶋は国内の広告代理店を経て、12年からKFCブランドを保有する米ヤム・ブランズのアジア部門で日本KFCのブランド戦略に携わってきた。18年4月、日本KFCに入社し、復活を直接仕掛ける立場になった。

 中嶋が戦略の要に据えたのが、お買い得感のあるセットメニューと期間限定商品。2段構えの作戦を取った。前者で来店頻度の低い客や新規客をつかみ、後者でいったん離れたファンを呼び戻すのが狙いだ。

 18年7月に販売を始め、今では定番化した500円のランチセットが大きな成果を上げた。「KFCの価値が下がる」という異論も社内から出たが、中嶋は「多くの消費者に体験してもらうことが大事」と説得した。

 効果は抜群だった。それまで前年割れが9カ月続いていた既存店に、18年7月以降、客が戻ってきた。以来、既存店売上高は今日に至るまで、3年以上前年を上回り続けている。

 中嶋はその功績で、20年4月から事業会社、日本ケンタッキー・フライド・チキンマーケティング本部長CMO(最高マーケティング責任者)を務める。

 外食の勝ち組の評価が定着したのを花道に、近藤は勇退。同じ三菱商事出身の判治孝之が社長の椅子に座った。  =敬称略

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