暮らしがタダになる「ゼロハウス構想」は実現するのか? YADOKARI代表に聞く

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 すべての人の住まいが無料になるーー。これは人口減少で空き家が増え続ける地方だけの話ではない。都市部でもそう遠くない将来、現実のものになるという。

 コロナ禍で変化した生活形態の一つが働き方だ。

 毎日新聞が昨年10月に実施した調査によると、国内の主要企業114社のうち、実際にリモートワークを導入していると回答したのが113社。そのうち9割に当たる106社が、コロナ収束後もリモートワークを継続する意向だ。IT業界を中心にオフィスの減床を実施、検討している企業は少なくない。

 それにより家賃の高い都市部を離れ、より広い間取りが安く借りられる郊外への転居、都市と地方の2拠点生活の動きが起こりつつある。こうした動きに伴って暮らしのコストを「ゼロ」にするプロジェクトが進行しているという。

  ◇  ◇  ◇

「現在、東京都町田市の鶴川団地、神奈川県横浜市青葉区の藤が丘、長野の北軽井沢で、住居費無料の住まいを提供しています。将来的には住まいだけでなく、電気、ガス、水道などの生活コストをゼロにしていく計画を立てています。東京などの都市部では生活のコストが高く、家賃やローンを払うために働いている人が多いと思います。暮らしの負担を減らすことでお金に縛られずに、趣味や家族など自由に使える時間を増やし、人々の幸福度を上げていける事業を展開していきます」

 こう話すのは住まいに関するメディアの運営、街づくりなどを行う「YADOKARI」代表のさわだいっせいさん。「Mission 2030 ゼロハウス構想」を展開するため、7月にはベンチャーキャピタルから資金調達を行い、数年後のIPO(新規株式上場)を目指す。

 さわださんが「ゼロハウス構想」に行き着いたきっかけは、東日本大震災だった。東北沖の津波で家が流されていく様子をテレビで見たとき、「人生をかけて家を買わなくてもいいのではないか」と思い、起業。

 自社メディアで空き家やタイニーハウスの情報を提供したり、企業から遊休地の活用や運営を任される中で、ゼロハウス構想の実現性が見えてきたという。

暮らしの無料化で目指すもの

 気になるのが、暮らしを無料で提供する仕組みだ。

「いま運営している物件は、住民がスキルを提供することで家賃がタダになるスキルシェア型です。例えば、街の活性化になるようなマルシェの運営や映画の上映会といったイベントに関わったり、物件を提供する企業の事業に副業的に携わったりすることが条件になっています。募集を行うと1軒につき200名ほどから応募があり、自分たちが思っている以上にこうした取り組みに関心を持っている人がたくさんいることがわかりました。目指しているのは、ベーシックインカム(最低限の所得保障の一種)の住まい版です」

 CSR(企業の社会的責任)の観点から、すでにUR(都市再生機構)や東急などの大手をはじめ、この構想に賛同する企業や団体は少なくない。スキルシェア型と合わせて、企業や投資家からの所有物件や資金の提供を受けるなど、スポンサードによる運営を進めていく。

すべての人にお金がかからない暮らしを

「今後、AIやロボットなどのテクノロジーによって、今ある仕事の多くがなくなっていくことが予測されています。GAFAのようなプラットフォーム企業が利益を独占していく中で格差が生まれ、富の再配分が叫ばれるようになると、プラットフォーム企業が住まいや車、電気、ガスといったインフラをタダで提供する動きが出てくるのではないでしょうか。例えば、アマゾンプライムの会員になっていれば、住まいがタダで借りられるといった感じです。こうした生活インフラが誰でも無料で利用できるようになれば、お金に対する恐怖もなくなっていき、仕事の概念が変わり時間に縛られない自由な暮らしが実現していくはずです。2030年くらいまでにはこうした流れができてくるのではないかと思っています」

 最終的にはセーフティーネットとして、すべての人にお金がかからない暮らしを提供していくという。介護や子育て、貧困など、問題を抱える家庭も少なくないが、金銭的、心理的負担がなくなれば、こうした悩みから解放され、前向きに生きる大きなきっかけになりそうだ。

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