「社畜」というコトバを作った荒井伸也のスーパーマーケット論
「社畜」というコトバをつくったのは私のように誤解されているが、私ではない。東大法学部を出て住友商事に入り、飽き足らずにサミットストアに移って、のちに社長になった荒井伸也である。荒井は安土敏という筆名で『小説スーパーマーケット』(講談社文庫)等の小説も書いた。荒井自身が、会社に飼われた家畜を意味する社畜ではなかったのである。
初対面の時、いきなり、手もとの紙袋を引き寄せて、かなり専門的なスーパーマーケット論を展開し始めて私を驚かせた荒井は、本格的スーパーマーケット、すなわち真の流通産業の開拓者として、関西スーパーの社長だった北野祐次を挙げた。そして、「スーパーマーケットは、生鮮食品を中心にして毎日の消費者の食事の材料や総菜を提供する、もっともっと生活に密着した地道な商売」だと強調した。