小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

トヨタ チームメイトがレベル3に踏み込まなかったのはなぜ

公開日: 更新日:

「ハンズオフ」はできても「アイズオフ」はできず

「やはりこの技術は発展途上で難しいところがございまして、お客様に安心して乗っていただくことを最優先に考えた場合、まずはレベル2で慣れていただくことが大切なのかなと」(トヨタ開発担当の川崎智哉氏)

 いま電動化に負けじとクルマ界が推し進めてるのが、運転の自動化だ。今年3月にはホンダ・レジェンドが世界初のレベル3自動運転「ホンダセンシングエリート」を初搭載して話題になったが、それに続いてトヨタが4月に燃料電池車のミライに搭載してきた高度運転支援の「トヨタチームメイト」は少々意外だった。

 同社初のセンサー技術である赤外線ライダーや360度センシング技術はすでにレベル3に踏み込んでもおかしくない段階。だがトヨタチームメイトは運転中に手を離せる「ハンズオフ」はできても、運転中に目を離せる「アイズオフ」はできない。

トータルとして事故を減らせるのなら先進技術は導入すべき

 それに対する開発者の答えが冒頭だが、勝手に邪推すると、トヨタチームメイトはその気になればアイズオフを搭載できたのだと思う。しかし、あえて踏み込まなかった。それはこの手には単純な技術進化以上に社会受容性がカギとなるからだ。

 実はホンダセンシングエリートが出た時にも一部ネットで見かけたが、「自動運転はまだ早い」という人がいる。それはコロナに対する警戒心みたいなもので人間、特に日本人は未知なるモノに対する恐れが強い。

 この手の先進技術は、本来トータルとして事故を減らせるのなら導入すべきだと思う。だが、導入時にはかつてない事故が起こり、猛烈にバッシングされる可能性がある。それは人は人が起こした事故ならば許せても、機械が起こす事故は許せないからだ。たとえ全体として被害者数が減ったとしても簡単には許せない。この手の先進技術の導入はそこが難しい。だからトヨタは導入を踏み留まったのだろう。

社会にどう認められるか、納得して貰えるかがカギ

 実際、公道で試した新型ミライのトヨタチームメイトは非常によくできていた。首都高を走り出し、速度などの条件が整うとメーター内に「Advanced Drive Ready」の表示が浮かび、メインスイッチを押せばレベル2運転支援が始まる。さらにモニターのグラフィックがグレーからブルーに変わるとハンズオフも可能。実際に手を離してみたが不安感は全くない。

 その後ステアリングに手を添えて首都高中央環状線に突入した時が凄かった。他社の技術では道が複雑すぎてサポートしないエリアでもトヨタチームメイトはグイグイと舵を切り、加速を続ける。もちろんハンズオフやアイズオフはできないが、安心感はやはり高い。

 今後この手の先進安全技術は、社会にどう認められるか、納得して貰えるかがカギとなる。少々じれったい面もあるが、それが日本という国だ。

 自動運転は徐々に大衆の反応を見ながら進化していくのである。

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