熱海の空き家がなんと「1円」…購入はお宝か、お荷物か?
日本の空き家の数は約850万戸、空き家率は13.6%(2018年)に達している(総務省統計局調べ)。そんななか、地方の空き家を積極的に活用する動きが少しずつ起こっている。
都内でインテリア製品のECサイトを運営している大巻広美さんも、そのひとりだ。温泉地として人気が復活している静岡県熱海市の築29年の空き家を1円で購入した。
「中古物件の部屋に家具を配置するホームステージングの仕事をしている関係で、不動産業界に知り合いが多く、以前から空き家に興味がありました。たまたまこの物件のことを知り、ずっと気になっていて昨年9月に購入しました」
大巻さんの物件は、JR熱海駅から車で10分ほどの高台にある。熱海でも旅館や別荘などを含め空き家率は50%ほどのため、処分に困った所有者が二束三文で手放すケースが少なくないという。
「1円で買えるということはそれだけ難アリな物件で、高台の傾斜地に建てられており、道路からゴンドラに乗らないと敷地に入れないのです。家の中には山のように残置物が残されている上に、雨漏りはしますし、駐車場もありません。幸い、主人が内装工事に詳しく、残置物の撤去からペンキ塗り、壁紙の張り替えまで仲間に手伝ってもらっているので、修繕費用は総額100万円程度で済む予定です。この夏までに改装するつもりです」
海が一望でき花火も観賞できる
ほかに、固定資産税や管理費で年間18万円ほどかかるが、この買い物に満足していると大巻さんは話す。
「山の中にある家からは海が一望でき、花火も観賞できます。朝は鳥の声で目覚めるほど、自然豊かな環境です。こんなにいいところが廃れるのはもったいないと思っています。少し手をかけるだけでキレイになりますし、買い物も駅周辺のほか車で5分ほどのコンビニで十分。リモートワークで毎日出社の必要がない人が拠点にするのにとても適した環境です」
東京を拠点に週の半分は熱海で暮らす予定の大巻さん。将来的に1階にカフェを開設して、空き家活用について企業や個人からの相談に乗ったり、他の空き家も買い取って改装し活用するなど、大好きな熱海の活性化に貢献したいと話す。
コロナ禍で都心から郊外への転出が増加傾向にあるなか、お荷物扱いされている空き家も、価値のあるものに変わる可能性を秘めているという。