脱線事故は「個人の責任」と言ったJR西日本の井手正敬
4月1日に新潮文庫に入った松本創著『軌道』はJR西日本の福知山線脱線事故を追ったものである。
そこに「JR西の天皇」といわれた井手正敬(元会長)のインタビューが出てくる。井手は松田昌士、葛西敬之と共に「国鉄改革の3人組」と呼ばれた。いわゆる国鉄の分割・民営化だが、私に言わせれば、これは断じて「改革」ではなかった。
残念ながら、『軌道』にはこの視点が弱く、井手の主張に根底から反論できていない。あの事故は「民営化」ならぬ「会社化」が招いたものであり、天皇の井手に重大な責任がある。しかし、歴代総理の指南番とかいわれた安岡正篤信者の井手はまったくそれを自覚せず、JR西日本の広報室では記者に『マスメディアを通した井手正敬小史』なるものを渡していた。
「函カバー入りのA4判、暗緑色の布張りに金箔押しの文字という仰々しい表紙」だというから、当時から井手は正気ではなかったのである。