茅ヶ崎が「住みたい街」大躍進 憧れの海沿いと塩害の現実

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「伊豆白浜に家を買って、サーフィンをしながらの完全テレワークは快適でした。ただ、1年が過ぎたころから『田舎疲れ』が起こりました。そこで、海が近くてほどよく便利な湘南に移り住むことにしたのです」

 こう話すのは、根本義光さん。最近、静岡県下田市から神奈川県茅ヶ崎市に移り住んだ。それ以前は千葉県柏市で暮らしていたので、2度目の移住になる。週2,3回の東京・上野のオフィスへの通勤も無理がないという。根本さんは茅ヶ崎を選んだ理由についてこう話す。

「街全体がおしゃれでユニークな個人経営のお店が多く、白浜になかった賑わいがあり“海が近い下北沢”という感じです。人情味豊かで新顔にも温かいのが素敵ですね。海が近いのに家から海が見えないのは想定外でしたが」

■「住みたい街」ランキングで大躍進

 コロナ移住で注目を浴びている茅ヶ崎は、恒例の住みたい街ランキングで躍進した。

 昨年まで「買って住みたい街」、「借りて住みたい街」ともに100位圏外だったが、今年はそれぞれ61位、62位まで急上昇(「2021 年 首都圏版 LIFULL HOME'S 買って(借りて)住みたい街(駅)ランキング」)。茅ヶ崎の魅力は、サザンオールスターズだけではないようだ。

「サザンの街、茅ヶ崎に憧れて住む人は多いのですが、全体がアクティブに動ける平地という点が大きいようです。鎌倉、逗子・葉山より価格が抑えられるところも選ばれている理由のようです」(茅ヶ崎サザン通りの不動産 有限会社タイズの森田祐司さん)

 コロナ禍では供給戸数が減っており、持ち家より賃貸需要が増えているという。特に、築浅の駐車場付き賃貸物件が人気で、「月の家賃相場は2LDKなら12〜13万円、1LDKは10〜11万円」。セレブ感のある鎌倉、逗子、葉山より不動産価格が抑えられている上に、ショッピングや飲食店はさらにバラエティー豊かで便利だ。

「茅ヶ崎海岸ICまで圏央道が開通したことで、埼玉方面から観光目的で訪れる人が増えました」(森田さん)

洗濯物はほぼ部屋干し、自転車は数カ月でサビる

 海沿いのデメリットはなんといっても、建築物などを劣化させる潮風による塩害だろう。塩害も茅ヶ崎の場合、防砂林のある内と外で大きく変わってくるという。冒頭の根本さんが「家から海が見えないのが想定外」と話していたのは、海沿いに走る国道134号線沿いに防砂林が続くためだ。自宅が防砂林の内側にあるおかげで、塩害による被害は想像以上に防げているという。

「茅ヶ崎でオーシャンビューを望むなら、防砂林の切れ目であるサザンビーチ海水浴場あたりになりますが、塩害は覚悟しないといけません。ただ、潮風より潮風が運ぶ砂がやっかいなので、少し内陸に入っただけでは暮らしやすくはならないでしょう」(森田さん)

■塩害がひどくても引っ越さない理由

 大手メーカーに勤めるSさんは、奥様とお子さん2人、中型犬の一家で茅ヶ崎に移住してきた。JR沿線かつ予算が許すかぎり海寄りという条件で、サザンビーチ近くの戸建てを購入。しかし、洗濯物はほぼ部屋干しで、子供を乗せる自転車は数カ月でサビるなど、塩害と闘う日々だ。テレワークの合間にDIYで修繕したり、サニタリースペースを増設したりと出費がかさんでいるという。

 それでも、他の街への引っ越しは考えていないという。

「海まで歩ける距離は捨て難いし、子育て環境も最高です。年間を通して家族で参加できるイベントも多く、茅ヶ崎にいることで生活が数倍楽しくなり、この街が大好きですから」と話す。

 人気ランキングなどに出てくる街も、実際に住んでみないと見えない現実が存在する。どう折り合うかは人それぞれだが、数十年に渡って住むことを考えると、住居選びは慎重にならざるを得ない。
 
 コロナ移住が可能なのは収入減とは無縁で、収束後の働き方が明確に見えている人だろう。それ以外の人たちが完全に居を移すのが難しいことを、コロナ禍が浮き彫りにしている。

(取材・文=大山ユミ/ライター)

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