30年前の物件価格が6分の1に…不動産購入で最も大切なこと

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不動産アナリスト・長谷川高)

 2020年11~12月にかけて「AERAdot.メルマガ」が興味深い話を配信していました。朝日新聞の元記者・稲垣えみ子さんが「まもなく訪れる老後ライフ目前に家を売却したワケ」というコラムで、30年前に購入し、ローンを完済したマンションを6分の1の価格で止むを得ず売却したことを明かしていたのです。

 老後前に不動産を売却した理由は色々あるようです、その点に関して意見を挟むつもりはございません。ただ、稲垣さんの取引がなぜこのような結果になったのかを私なりに解説させて頂きたいと思います。

 まず、この「30年前」というのがポイントです。今から30年前と言えば、1990年から91年のバブルの絶頂期でした。つまり、不動産価格も”天井“にあったわけですが、それにしても「購入価格の6分の1でしか売れなかった」というのには驚きました。あまりにも価格の割れ方が大きかったためです。気になったため、コラムをよく読むと、稲垣さんが所有していたのは関西にある物件だったそうです。

 90年代初頭、筆者はサラリーマンとして会社の不良資産を処理(=損を出して売却)する業務にあたっていました。その頃の記憶として、東京より地方の物件の方が(原価から)割れる率が格段に大きかったのです。読者の方々に知って頂きたいのは、不動産価格がバブル崩壊等で大きく崩れる時、①まず地方から崩れる②なおかつ地方の方が値崩れの率が大きい、ということです。筆者はこれまで稲垣さんと同じような立場にある方々から数々の相談を受けてきました。

■2010年前後に買った物件の価格は2倍に

 一方、時間軸をこの10年間ほどで見ると、全く違った様相になります。昨年末、10年以上のお付き合いがあるお客様とお会いしました。この方は実需と相続対策の両方で約10年の間に東京都心に複数のマンションを購入してきました。その所有物件の一覧表を拝見しましたところ、全ての物件で(現在の時価に照らし合せて)含み益が出ていたのです。

 この方は、この約11年の間に物件を6つほど購入し、筆者もその度に同行させていただき、一緒に物件(マンション)を見に行きました。そして、その中において一番含み益が出ているマンションは、2010年前後に買った物件でした。購入してから11年以上が経っていますが、価格は約2倍になっていました。つまりリーマンショク後の経済不況の渦中において購入したマンションが最も含み益が出ており、一方、最も売却益が少ない(恐らく数%)と思われる物件は直近2年前に購入したものでした。

 稲垣さんが所有していた物件と筆者のお客様の購入物件の所在エリアはそれぞれ異なりますが、30年前に買った不動産が購入時の6分の1でしか売れない一方、約10年前に買った不動産に大きく含み益が出ていることが鮮明になりました。すでにお分かりの様に、実需で不動産を買うにしても、売却時の損得を気にするのであれば「どこに何を買うのか」はもちろんのこと、それ以上に「いつ買うのか」がまさに大切なのです。

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