小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

脱ガソリン車報道の嘘 なぜ行きすぎた報道が蔓延するのか

公開日: 更新日:

経産省も「何かが決まっているわけでは…」

 先週12月3日、見過ごせないニュースがTV新聞ネットの大手メディアを駆け巡った。「日本政府が2030年代半ばには新車販売をすべて電動のものとし、ガソリン車をゼロとする目標を掲げることを検討」という内容だ。

 見出しにはデカデカと“脱ガソリン車”がうたわれ、日本もすわ15年後にはガソリンやディーゼルエンジンなどの内燃機関の製造・製造を全面的になくすのか? と驚かされる。最近では、小池東京都知事までもが「2030年には……」とさらに前倒しの目標を掲げた。

 だが、本文をよく読むと廃止を検討しているのは純粋なエンジン搭載車だけで、エンジンとモーターを両方持つハイブリッド車は継続生産されるし、見出しほどショッキングな内容でもない。

 また筆者が経済産業省に直接確認したところ「出所はハッキリしていませんが、検討中ということで何かが決まっているわけではありません」といい、方針が完全に決まったのとも違う。

曖昧な「電動車」の定義

 この手の動きやリークに大手メディアが躍起になって「脱エンジン車」(ある意味これは間違いでエンジンを搭載するハイブリッドは継続生産される)と言いたがるには理由がある。

 基本的に一部大手メディアには「日本の自動車産業は電動車開発で遅れている」との認識があり、90年代にスマホやテレビ事業で大敗北した家電界の二の舞になるとの危機感を持っているのと、もう一つは「電動車」の定義が曖昧なことだ。

 ひと口に電動車と言っても100%電気モーターで動くピュアEV(バッテリーEVとも言う)から90%ぐらいエンジンで動くマイルドハイブリッドまで複数あり、どれも「電動車」と言うことができる。つまり、ほんの少しでも電動モーターで動く車両ならばそう呼べるのだ。だが、一般的な電動車に対するイメージは、ピュアEVであり、すべてが電動車となる? と聞くと一瞬全部EVになるのかと驚いてしまう。

 だが、今回言う「脱ガソリン車」に当てはまるのは具体的には、電動駆動システムを全く持たないトヨタ・ランドクルーザーやハイエースのようなクルマがメイン。筆者的には、これらまだまだ日本や世界で活躍するクロカン4WDや商用バンを本気で廃止にするつもりなのか? と怪しむが、確かにこれらは日本車のほんの一部。そのほかハイブリッドと純粋ガソリン車を併売する車種も多く、本気でハイブリッド化しようと思ったらできないわけはない。

日本は現時点で「電動車先進国」

 同時に日本は既に直近、国内乗用車販売の40%以上がハイブリッド車やピュアEVで、特に日産は60%を超える。これは世界的に見ても高く、日本は現時点で間違い無く「電動車先進国」なのだ。

 ただし、ピュアEV比率に限っては中国や北欧、欧州ほど売れていない。大手メディアの焦りはここにあり、「電動車≒ピュアEV普及で日本は世界に負けている」という認識なのだ。確かにその辺り、日本は完璧ではないかもしれない。だが、ハイブリッドも立派な電動車であり、その国の発電の大半が化石燃料で行われているのならば、エコロジー度は時にピュアEVを超える。本来的にはそのクルマがトータルでどれくらいCO2を出すのかが問題なのだ。そうでなくとも電動化は言葉でいうほど簡単ではない。そもそも電池製造の環境負荷も決して小さくはないはず。

 この手のニュースを読む時、その電動車がピュアEVのみを指すのか? ハイブリッドも含むのか? を良く注意していただきたい。それだけでニュースの意味は大きく変わってくる。

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