瀬戸内寂聴さんは勇気のある表現者…一貫して「反戦・反権力」の人だった
瀬戸内寂聴さんは終始一貫して反戦・反権力の人であり、希代のアナキストだった。体制側につかず権力によりかからず世間の常識に異議を唱えることは、弱者・マイノリティーの側に立つことだ。反戦・反権力や弱者救済が話題に上るとき、つねに寂聴さんのお姿や発言がそこにはあった。
私が最初に彼女のことを知ったのは中学生の頃、小説がきっかけだった。「新潮」だったと思うが、雑誌に掲載されていた「花芯」を読んだ。まだご本名の瀬戸内晴美で書かれていたころだ。夫のある女性が、夫の上司に恋をしてエロスの世界に溺れていく……という物語だが、そこに描かれた官能の世界に驚いた。男が風邪をひき、治すためにネギを食べるくだりがあり、ヒロインが「彼がネギ臭い口でキスをしてくるのが嫌だった」という描写があったのをいまだに覚えている。