もし富士山が噴火したら…どう逃げればいい? 溶岩流噴出量は最大13億立方メートル!

公開日: 更新日:

 1707年の「宝永噴火」を最後に約300年もの間、不気味な沈黙を続ける富士山。日本に111ある活火山のひとつであるが、地下深くでは今もマグマが活発な活動を続けている。いったん大爆発すれば被害総額は1.2兆~2.5兆円に上るとされ、富士山から100キロ離れた東京にも10センチの火山灰が積もり、都市機能が麻痺する予想だ。

  ◇  ◇  ◇

①どれくらいの溶岩流が街を襲うのか

 最初の前兆は温泉の温度の上昇から。やがて大きな地震と共に火山が爆発し、火砕流が森と建物を次々とのみ込む──。1997年に公開された火山災害をテーマにした映画「ダンテズ・ピーク」の一場面だ。映画のモデルとなった火山は米ワシントン州にあるセントへレンズ山で、1980年に大爆発を起こした。セントへレンズ山は富士山に似た形状で、安山岩質溶岩と火砕岩からなる。

 富士山もいつ噴火してもおかしくなく、2021年には「富士山ハザードマップ」、昨年は「避難基本計画」が改定されている。ハザードマップの大きな変更点は以下の通りだ。

・想定噴火口が従来の44カ所から252カ所に増加
・溶岩流の噴出量を最大7億立方メートルから13億立方メートルに修正
・溶岩流はこれまでの想定より早く、より遠くに到達する
・火砕流は北東と南西方向に到達エリアが拡大

 噴火は山の頂上や稜線で発生するイメージが強いが、街の中心部で爆発が起きる可能性も指摘されているのだ。

 さらに、噴出する溶岩量は864年の貞観噴火を参考に13億立方メートルに修正された。10キロ四方の土地13個分を高さ1メートルの溶岩が埋める量に匹敵する。貞観噴火はふもとの地形を変え、押し寄せた溶岩流が元は1つの湖だった精進湖と西湖を分断してしまったほどだ。

■太平洋クラブ御殿場には2時間で溶岩流が到着

②どの範囲が避難対象エリアになるのか

 富士山を絶好の角度で仰ぎ見ながらプレーする太平洋クラブ御殿場コース。想定ではこの名門ゴルフコースに2時間で溶岩流が到着する。最終的に溶岩流は御殿場プレミアム・アウトレット付近までのみ込む。溶岩流の温度は1000~1200度、時速1~2キロ。歩いても逃げられる速さであり、パニックにならないことが肝心だ。

 静岡県危機管理部の担当者がこう言う。

「溶岩流からは原則、徒歩で避難します。従来は車での避難でしたが、渋滞による逃げ遅れの懸念があり、シミュレーションで溶岩流が3時間以内に到達するエリアから離脱するのに“最大6時間以上”を要することがわかったからです。富士山頂は噴火前に避難しますが、市街地の避難については状況によります」

 溶岩流の到達時間によって第1次~第6次の避難対象エリアが設定されており全エリアの推計人口は79万2257人(表参照)。これに多くの観光客と買い物客が加わる。

 噴火口は現在の技術では特定できないことから、避難エリアはどこでも対応できるよう全方位となっている。したがって、静岡県側が大パニックになっていても、山梨県側は避難の必要がないケースも出てくる。ちなみに、貞観噴火は山梨県側に溶岩が流れた。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    これが裏金議員50人の選挙区だ! 焦る石破自民「非公認」「比例重複なし」に方針転換も戦況悪化は加速【一覧表あり】

  2. 2

    日本人のパスポート保有率17%に低下の衝撃…旅行業界が危機感露わ「新成人に無料配布を」

  3. 3

    萩生田光一氏がひろゆき氏に激オコも国民冷ややか…“再就職先”に「加計学園」浮上も居場所なし?

  4. 4

    自民ベテラン“ドサクサ駆け込み世襲”に批判続出!桜田義孝元五輪相は長男内定まさかの失敗

  5. 5

    杉田水脈氏は参院“鞍替え”出馬か? 衆院選辞退でも「差別発言」「裏金事件」の反省ナシ

  1. 6

    河野太郎氏は総裁選で最下位争いのオワコン…保険証廃止強行で“政治生命の危機”の自業自得

  2. 7

    河野太郎氏「押印」ボヤキ投稿でも露呈 デジタル担当相の“功績”むなし、総裁選の惨敗は必然だった…

  3. 8

    石破首相の「裏金議員=非公認」に旧安倍派から“恨み節”のトンチンカン…世論は《一人残らず落選した方がいい》

  4. 9

    悠仁さまは学習院ではなぜダメだった?大学進学で疲弊する宮内庁職員「もうやめたい」と悲鳴

  5. 10

    定年目前で仕事の充実感が低下…“走る”が生む生きがいを「定年ランニング」の著者が説く会員限定記事

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    妻・瀬戸サオリの反論が"トドメ" ジャンポケ斉藤は消滅危機…インスタには4歳の息子の写真がまだ…

  2. 2

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  3. 3

    ジャンポケ斉藤慎二に付ける薬なし…2度目の不倫発覚に「女性を消耗品扱い」と識者バッサリ

  4. 4

    ジャンポケ斉藤がアウトでダウンタウン松本はグレー? 売れっ子芸人の驕りと倫理観の欠如

  5. 5

    山本由伸に「メジャーワースト6位」の欠点…初のポストシーズンで心配なデータ

  1. 6

    ジャンポケ斉藤慎二 ロケ車内での性的行為には“常習説”…吉本契約解除は「トカゲの尻尾切り」

  2. 7

    旧ジャニーズの度し難い不誠実…「法を超えた補償」は大ウソ、記者会見すら開かず

  3. 8

    ジャンポケ斉藤慎二は裁判なら有罪の可能性…妻・瀬戸サオリ“軽はずみインスタ投稿”の重み

  4. 9

    フェンシング宮脇花綸がバラエティー番組に引っ張りだこ!美貌とトーク力に若手芸人お手上げ

  5. 10

    百田尚樹氏vs飯山陽氏 “日本保守党ドロドロ内紛”の船出…4月補選の蜜月はどこへ?