「冬季うつ予防」に毎朝30分の散歩を! 意識して太陽の光を浴びよう
歴史的な猛暑が続いていますが、朝晩はずいぶんと涼しくなり、秋の気配を感じます。秋の行楽シーズンに向けて旅行などを計画している方は、少なくないでしょう。
さて、今回は秋から冬にかけての外出のススメです。なぜかというと、この時季は、気分が落ち込んで、やる気が起きないとふさぎ込む人が増える傾向があります。冬季うつです。
■体内時計の乱れで、気分が落ち込みがちに
冬季うつは、体内時計が乱れることで、発症しやすくなります。体内時計の中枢は、脳の視床下部にあり、太陽の光を浴びると、視床下部が刺激されてセロトニンという、神経伝達物質の分泌が促されますが、寒さなどで外出が少なくなると、その分泌が減り、体内時計が乱れて、気分が落ち込みがちになるのです。
もうひとつは、ビタミンDの合成が関係しています。ビタミンDは紫外線を受けて体内で合成されますが、外出が減ると、その分、ビタミンDの合成も減少。ビタミンDは、精神を安定させる働きのあるカルシウムの運び屋でもあり、ビタミンDの減少により、必要なところへのカルシウム供給も減り、精神が不安定になりやすいのです。
こうしたことが関係して、さらに日照時間の減少も重なって、冬季うつが発症しやすくなるのです。日照時間が極端に短くなる北欧では、真っ暗な日が続いて、冬季うつになる人がとても増えます。
日本では、北欧ほどひどくはありませんが、それでも仕事をしなくなった高齢者では、要注意でしょう。意識して太陽の光を浴びることが不可欠です。
まず朝起きたら、カーテンを開けて、太陽の光を取り込むこと。そして午前中、できれば10時くらいまでに散歩して太陽の光を浴びましょう。なぜ10時までかというと、視床下部を刺激するには、午前中の光が不可欠なのです。
高齢者のうつが厄介なことは、この連載で何度となくお話ししています。これからの時季、寒いからといって家に閉じこもっていると、冬季うつが悪化し、高齢者はうつ病態になりやすい。それが悪化すると、最悪の場合、自殺ということにもなりかねません。
その悪循環を断ち切るには、朝の散歩を日課にすることです。30分で構いません。そうすれば冬季うつを予防して、脳の健康を守ることができます。適度な有酸素運動が認知症の予防になることはWHOも認めていて、強く推奨していますから。
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