和田秀樹
著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

年齢を重ねると否定的でガンコに…70歳からは「50点主義」がちょうどいい

公開日: 更新日:

 皆さん、年を重ねて否定的でガンコになったと言われたことはありませんか。老後は、物事の一面しかみない単眼思考やマイナス思考になりがちで、「どうせできっこない」と短絡的に否定的な結論を導く傾向があります。

 そうすると、腰が重くなって、行動範囲も狭くなるでしょう。前頭葉の働きも衰える上、この思考パターンは、この連載で何度となく危険性について触れている高齢者のうつ病の発症原因にもなります。

 高齢者こそ「何とかなるさ」というプラス思考が大切です。歴史に名を残す名経営者の松下幸之助さんは採用面接で「君は運がいいと思うか?」と尋ね、「運がいいと思います」と答えた人のみを採用したという伝説があります。このエピソードは、松下氏が「人生では、楽観主義が大事」ということを実感していたことの証左といえるでしょう。

 歴史上の名経営者になぞらえるのは酷かもしれませんが、皆さんもぜひ楽観主義、プラス思考を心掛けてください。そうすると、脳ではドーパミンが分泌され、幸福感が増して、前頭葉の働きも活発化します。うつや認知症の予防になることはいうまでもありません。

 私の知人のコピーライターは、ある商品をPRするとき、その長所だけでなく、短所を探し、あえてけなしてみるそうです。この機能は、本当に必要か。類似商品がほかにもあるのでは……。買う理由だけでなく、買わない理由も考えることで、その商品の全体像を把握できるのです。

 この考え方は、単眼思考と対をなす複眼思考。私もこの複眼思考を大事にしています。賛成でも2割くらいは疑ってみるようにしているのです。ですから、ある本を読んでとても共感しても、あえて反対意見の著者の本も読むようにしています。そうすると、思考が偏らず、前頭葉がフル活動してくれるのです。

 かつて経団連の会長だった土光敏夫さんは「60点主義で即決せよ。機会を失うのは度し難い失敗だ」と語って、悩むより即決での行動を説いていました。

 私も、この精神が大事だと思います。それくらいの勢いがないと、老いの坂は上り切れないでしょう。もっというと、70歳を越えたら、さらにマイナス10点の50点主義くらいがちょうどいいでしょう。

 老後は完全主義や様子見で結論を先延ばしにするのはやめ、50点主義で悩むより進むことを心掛けてください。人生の“締め切り”が迫っているのですから。



◆和田秀樹氏の著書「いつまでもハツラツ脳の人」」(1100円)日刊現代から好評発売中!

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