続・居場所なき定年夫…日中は“夫婦別々”が鉄則! 妻の「一人時間」を演出すべし
定年後の夫は自宅に居場所がない……。今月26日付の当欄で定年後の夫について切ない実態を伝えたところ、「ウチがまさにそう」といった読者の声が相次いだ。そこで、居場所なき定年夫の続編として、より具体的な妻との距離の取り方を紹介しよう。
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埼玉県川口市に住む64歳の男性は、新卒で入社した広告会社を60歳で定年退職。その後は嘱託として勤務時間を減らして働いている。
「65歳を越えても働けますが、もう働く意欲がなくて。長野に住む母親の具合もあまりよくなく、嘱託とはいえ働きながら実家と川口を行ったり来たりは正直、しんどい。仕事はもういいよ」
そんな実家の事情も重なり、嘱託勤務は残り1年ほどで終え、川口か実家で暮らすことを考えている。
■「内科? 会社の近くのままでいいじゃない」
1歳下の妻も長野出身で、愛着のある川口にとどまることも、長野に戻ることも反対ではないそうだが、妻と折り合いがつかないことがあるという。
「軽い糖尿病と高血圧があって、会社の近くにある内科をかかりつけ医にしています。でも、定年したら通院が大変だと思って、妻と食事しているときに何げなく『近所の内科に代えようかな』と話をしたら、『えっ?』と驚いて、こう言われました。『東京まで40分くらいの通院を嫌がって、あなたの体のことを一番よく分かっているお医者さんを代えるのはもったいないわよ。近所の内科は評判よくないし。月1回の通院ついでに、OB同士で一杯飲んでくればストレス発散にもなっていいじゃない』って。そのほかにも、シルバーセンターの求人を紹介してきたり。言い分はもっともですが、私に家にいてほしくないのがミエミエ。ホント、定年後の居場所問題がこれほど影響するとは……」
男性はため息をつき、こう言った。
「平日の昼間の自宅は妻のものですから、気持ちは分からなくもない。でも、私の定年後はどうすればいいんですか?」
■今後夫婦2人で過ごす時間は人生の4分の1
定年後の夫婦は、結婚当初のような恋愛感情が薄れ、腐れ縁かもしれない。それはそうだとしても、夫婦が本当に真正面から向き合うのは、定年後だという。セックスに関する相談窓口「せい相談所」の代表キム・ミョンガン氏が言う。
「結婚してから定年までは、夫婦ともに仕事や家事、育児に忙しい。週末や長期休暇などで夫婦水入らずの時間を持ったとしても、限られています。ところが、定年後はそんな足かせがなくなり、どちらかが亡くなるまで確実に夫婦の時間です。男女とも平均寿命は80歳を超えていますから、その時間は20年近い。つまり、定年後の夫婦の時間は人生の4分の1近くを占めるのです。居場所問題を足掛かりに、夫婦で快適でいられる生活についてしっかりと話し合って折り合いをつけておかないと、定年後の夫婦生活はつらいですよ」
夫婦の時間は、定年後が4分の1。改めてそこに気づくと、定年夫婦の目の前に広がる時間は長い。何よりその事実が重い。定年夫婦をめぐる居場所問題が、家庭によってはこじれるのも当然かもしれない。キム氏が続ける。
「居場所問題の解決のカギを握る条件が男性の家事力。その理由としてよく語られるのが、家事力のない夫を抱えた妻は、食事の世話で外出がままならなくなるという食事問題があります。重要な視点はそこではありません。60代以降は年齢的に病気やケガと隣り合わせで往々にして看病や介護が必要になるのに、家事力がない夫ほど、病気の妻に『寝込む前にオレの食事を』などと言ったりします。そんな夫に、妻があきれるのも当然。家事力の有無は定年夫婦の最後に影響を及ぼすから、特に男性の家事力が大問題なのです」