人口7800人…かつてセメント産業で賑わった横瀬町がつくった「Area898」とは?
横瀬町は埼玉県の北西部に位置する、人口7800人の山あいの町。寺坂棚田、あしがくぼの氷柱をはじめとして、のどかで風光明媚な場所として知られる。その穏やかな風景とは裏腹に、毎日午後0時30分に、横瀬町のシンボル「武甲山」(標高1304メートル)で、石灰岩を採掘するためのダイナマイト音が聞こえてくる。
というのも、武甲山で採掘した石灰石が原料のセメント生成業は町の主要産業だから。そのセメントは戦後高度成長期の日本の道路、建物などの原料になり、経済的な恩恵を地域にもたらした。
「私が小学生だった1960年代、セメント会社に勤める家庭の子供が同じ学校にたくさん通っていました。街中にも大きな工場があり、とても活気にあふれていたのです」と語るのは、横瀬町のコミュニティーイベントスペース・Area898マネジャーの大野洋さん。
横瀬で暮らす大野さんや秩父地方の住民にとって武甲山は山岳信仰の対象である“神の山”。以前は緑豊かな美しい山だったが、現在は無数の坑道が掘られ採掘の影響で標高が低くなったそう。