いつまでも自分の足で歩きたい! 階段や坂道は「上り」より「下り」の練習を
都心は桜が満開です。花見がてら散歩をしている人をよく見かけます。今回は、認知症予防における散歩の効用についてです。
世界保健機関(WHO)は2019年、「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を発表。その中で「強く推奨できる」として挙げられたのが「身体活動(運動)」でした。つまり、日常的に運動をすれば、認知機能の低下を食い止めることができ、認知症になりにくいということです。
では、どんな運動がいいか。60代を超えたら、激しい運動は必要ありません。緩い運動でよく、毎日30分程度の散歩でOKです。
筋肉には、筋紡錘と呼ばれる知覚神経の末端があります。歩いたりして体を動かすと、それが刺激されて、巡り巡って脳が刺激されます。適度な運動を続けることが、脳の活性化につながるのです。
散歩で体を動かすと、おのずと血流もよくなり、脳への血流量や酸素も増え、脳の働きもよくなります。ですから、家の中のことも、妻や子供に「あれを取って」と頼むのではなく、自分で動くことを心掛けることが大切です。
散歩そのものが目的化すると、外出がおっくうになります。友人と食事に出かける、仲間と麻雀を打ちに行く、スポーツ観戦や音楽鑑賞に行く、趣味の教室に通う、日用品の買い物に出かける、植物観賞に公園を回って写真を撮る……。楽しみのために出かけることを習慣化するのです。
そうすれば、自然と家族や友人、街の人との交流も増え、会話が弾みます。歩いて筋肉を刺激した上、会話をすれば、より脳が活性化され、認知症予防には一石二鳥なのです。
健康な人でも、70代の筋肉量は20代の半分程度まで減っています。それが転倒や寝たきりの一因になりますが、そうならないためにも楽しみの散歩を続けることがとても大切です。
先ほど無理のない運動を、と紹介しました。息が切れるほどハードに歩くことはお勧めしませんが、可能な範囲で散歩コースに階段や坂道があるルートを選ぶことはより効果的です。
筋肉には、弱りやすい筋肉と弱りにくい筋肉があり、階段や坂道の上り下りでは、下るときに使う筋肉が低下しやすい。いつまでも自分の足で歩くには、下りの練習を可能な範囲で取り入れるとよいでしょう。
花見がてら、楽しみの散歩に出かけてみてください。
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