地質からみた名湯の見分け方…“石オタク”の賢人おすすめの「ジオ温泉」とは?
長谷川怜思さん(八千代エンジニヤリング 地質・地盤部)
日本人が愛してやまない温泉。絶景温泉や美肌温泉、ひなびた温泉もいいが、今回学ぶのは「地質」で楽しむ温泉だ。教えてくれるのは地質技術者の長谷川さん。大学で地質科学を勉強していた時から、フィールド調査の傍ら温泉巡りを楽しんでいたが、今の会社に入ってから、ますます関心が高まったという。公私ともに石オタクの賢人がおすすめする「ジオ温泉」とは?
──地質技術者とはどういう仕事ですか?
ダムやトンネル、橋梁などのインフラ整備に先立ち、その地盤が建設に耐えうる強度か、斜面災害や水に関わる問題を生じないかなど、現場で地質調査を行う仕事です。初期の段階では「地質踏査」といって、山の中をひたすら歩いて石の地図を作る作業を行います。
斜面には草木が生い茂っていて、衛星・航空写真では地面の凹凸がわかりませんし、岩石・地層の種類、硬さや水の通りやすさは、自分の目や手で直接確認する必要があります。ですので、一年の大半を山の中で過ごしています。
──地質と温泉にはどんな関係が?
例えば花崗岩、石材名でいうと御影石の産地には、ラジウム温泉が多いといわれています。これは御影石の中にウランを含みやすいタイプのものがあり、そこから発せられる天然の放射性物質が温泉に含まれるからです。中でも、鳥取県の三朝温泉は世界屈指の放射能泉として有名ですが、近くの人形峠には古くからウラン鉱山があったことでも知られています。このように、温泉の成分は地質の影響を受けていることが多いのです。
私も仕事でよく使っている「地質図」と、有名な温泉地の場所を照らし合わせてみると、それぞれの泉質と地質との関連性が見えてくるので面白いですよ。地質図は国立研究開発法人産業技術総合研究所の「地質図Navi」というウェブサイトで誰でも無料で閲覧できます。