不足分が半分に…? 老後資金2000万円問題がいつの間に消えた理由を探る
この2月に発表された22年の家計消費では、実収入24万6034円、実支出27万1889円で赤字は2万5855円だ。これを30年間続けると、赤字分は930万7800円となる。19年と比較して半分の貯蓄で賄えることになるのだ。
さらに、コロナ禍による旅行、観光などの外出抑制、モノの買い控えによる消費支出の減少も「消えた」大きな要因に挙げられる。しかし、2000万円問題消滅の声に慎重な意見は多い。ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員がこう説明する。
「30年間の生活の不足分が半分の930万円に減ったことは大きい。しかし、現実にほぼ1000万円あればいいということではありません。年金も退職金も徐々に減っていますし、コロナが終息することで、この間抑制されていた消費が増えると考えられます。賃上げも期待されていますが、賃上げはサービス価格も上昇させ、モノの値段が上がれば支出を圧迫することになります。老後の2000万円問題は消えてはいません」
■年金は実質目減り、やっぱり…
実際に退職金は1997年の2871万円から2018年には1788万円と、21年前に比べ1000万円以上減額している(厚労省・就労条件総合調査、大卒)。また年金は令和5年度の改正で前年度比2.2%引き上げられたが(67歳以上)、マクロ経済スライドでは実質目減りだ。ファイナンシャルプランナーの目黒政明氏が言う。