明治22年創業の洋食店が135年の歴史に幕…老舗が消える背景に「味の継承」の難しさ

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 昼時になると、周辺のサラリーマンらが列をなす老舗洋食店。東京・日本橋小網町にある「桃乳舎」が突然閉店したのが、今年2月のこと。

《臨時休業からの閉店となり、お客さまに直接ご挨拶と感謝を伝える事が出来ず、又大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。これまで当店をご愛顧いただき誠にありがとうございました。心より感謝申し上げます。店主》

 通い始めて20年あまりという50代会社員の男性はこう話す。

「臨時休業していましたが、そのまま閉店を伝える貼り紙がされたのが2月のことでした」

 東証からも近く、証券街の兜町と商品先物街の蛎殻町のちょうど中間にある同店は、牛乳や軽食を提供するミルクホールとして1898年(明治22年)に創業。その後、時代を経て喫茶店、洋食店と姿を変えていったという。
 
「老夫婦とご家族で切り盛りされている店内は正午前後は常に満席でしたが、15時まで営業していたので遅めのランチを食べに良く通っていました。原材料が高騰する中、値上げもせずに続けていたので心配していた矢先のことでした。突然の閉店に故郷を失ったかのような喪失感に襲われています」(前出・50代会社員の男性)
 
 昭和8年築の趣ある建物は建築フリークの間でも知られているというが、同店の名物はなんといっても、ひとつひとつ手作りされた洋食の味だ。
 
「揚げたてのメンチカツやアジフライなどにキャベツの千切り、スパゲッティーが乗った日替わりランチは500円ほど。ライス抜きにして大きめの丸皿でランチを注文する人もたくさんいました。丁寧に作られたハンバーグやカレーライスも人気で、周辺にはほかにも老舗の洋食店がありますが、群を抜く存在でした」(前出・50代会社員の男性)
 
 カツカレー570円、ハンバーグライス520円、オムレツライス520円、エビフライライス730円……と今どき信じられないほどの安さ。お財布にも優しい同店には遠方からも客が訪れていたという。

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