もはや国民病!「花粉症の経済学」推計1日2200億円超の経済損失…手当を支給する企業も
花粉症がピークを迎えている。3人に1人が発症しているといわれる、この「国民病」の経済的損失は年々大きくなるばかり。社員の生産性を維持するため、対策に乗り出す企業も現れ始めた。
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スギ由来の花粉症はおおよそ2月から4月までに大量飛散する。東京都は今春の花粉の大量飛散は昨年の2.7倍と予測。環境省もここ10年で過去最大と予測している。
花粉症の健康被害は幅広く、くしゃみ、鼻水、目や全身のかゆみに悩まされている人は多い。個人はその対応で経済的にも物理的にも負荷が増す。病院や薬局を訪れる一方、花粉の付着を避けるため外出は控え、部屋干しを増やしたりしている。
日常生活のパフォーマンスの低下は、職場でも同様。パナソニックが2020年2月に発表した調査に基づく推計では、花粉症の経済的損失は1日当たり2215億円に該当するという。
■生産性は低下
同社の「社会人の花粉症に関する調査」は、20歳から60歳の社会人1324人にアンケートを実施。8割が仕事のパフォーマンスが落ちていると回答。たとえば、睡眠中に鼻づまりになれば呼吸がしにくくなり、睡眠が浅くなる。そうなれば日中の仕事中に眠気が襲う。さらに睡眠の質が悪ければ、免疫異常がひどくなり花粉症が悪化するという悪循環も起きる──。
そのため調査では、花粉症によって1日2.8時間分の労働力が低下していると推計。社会人の労働力低下による経済的損失額は1日当たり「約2215億円」と算出したのだ。
また、約半数が花粉症対策として年間1万円以上支払っていると回答。物価高の中、このような医療支出は家計に痛い。
一条工務店も2月に450人に実施した「花粉症に関する意識調査」の結果を発表。8割以上が花粉症で自身の仕事のパフォーマンスが落ち、5割が外出控えを経験と回答したという。
第一生命経済研究所も総務省、経済産業省、気象庁など公的機関の統計データに基づいた分析を2月20日に発表。
永濱利廣・首席エコノミストの分析によると、過去の統計によれば猛暑の翌年は家計消費支出が0.5%減少している相関関係が見つかるという。昨年は平年より気温が1.4度上昇しているため、今年1~3月期の実質家計消費は前年比3831億円、実質GDPは3272億円押し下げられると計算した。
その内訳は次のようなものだ。消費支出が減少する項目は、外出控えと関係のあるレジャー関連を含む「教養娯楽」、外出頻度が増えると支出が増える「被服及び履物」など。