“外圧”なくして賃上げなし…熊本進出の台湾企業は初任給が相場4割増、人材獲得競争が激化
やはり大手企業はうらやましい。任天堂は7日、全社員の基本給を4月から一律10%引き上げると発表。モーター大手「日本電産」も同日、平均賃金7%増を打ち出した。
経営体力のある大企業はまだしも、中小企業はなかなか賃上げの波に乗れない。
帝国データバンクの調査によると、昨年判明した人手不足倒産140件のうち、従業員の退職・離職が要因となった倒産は57件。2019年以来3年ぶりに増加に転じた。人材流出を防ぎたくても、それに見合う賃金を確保できない窮状だ。
政府は「インフレ率を超える賃上げ」を掲げるが、現実は厳しい。第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏がこう言う。
「物価上昇率を超える賃上げを実現するためには、春闘で賃上げ率3.5%以上を達成する必要があります。しかし、民間エコノミストによる賃上げ率見通しが平均3%を下回っていることを踏まえると、ハードルはかなり高い。一方、国際競争にさらされている企業は、海外との賃金格差を是正するために、大幅な賃上げを打ち出しています。労働市場の流動性が低い日本では、外資企業の進出に伴う賃上げの“外圧”が、労働者の待遇の底上げにつながる可能性があります。裏を返せば、外資企業が賃上げを牽引するぐらい大きな動きがないと、なかなか本格的な賃上げにつながらないのです」