岸田首相が目論む「年収130万円の壁」見直しは行うは難し、もう“やるやる詐欺”一直線へ
「幅広く対応策を検討する」──。パート労働者の所得が一定額を超えると扶養から外れてしまう、いわゆる「年収130万円の壁」をめぐり、岸田首相が1日の衆院予算委員会で制度見直しに言及。働く人を増やし、人手不足を解消する狙いだが、現実はそう簡単ではない。
現行では、配偶者を持つパート労働者は年収130万円を超えると扶養から外れ、社会保険料の負担が生じる。手取りが減ってしまうため、特にパート主婦は働きたくても、上限額を超えないように就労調整を余儀なくされてきた。
施政方針演説で「年収の壁」の見直しを表明した岸田首相に対し、自民党の平将明議員が予算委で「(年収の壁により)働き控えが起き、人手不足が進む。時給を上げても、さらに(働く)時間を削るという“無間地獄”になっている」などと指摘。働き手を確保するため、「壁」にブチ当たった際に所得が減らないよう時限的な給付金の支給を提案した。
岸田首相は前向きに応じたが、「行うは難し」である。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「共働き世代が増える中、サラリーマンの妻が『年収の壁』を超えない限り扶養の恩恵を受けている現行制度は、“専業主婦の優遇”と批判されてきました。自営業の妻や未婚者からすれば、不公平感があるのも事実です。こうした前提を考えると、一時的な給付金にしろ、『壁』となっている収入上限を取っ払うにしろ、さらに優遇するのかという批判が噴出しかねません。かといって、優遇制度そのものを廃止するのも困難でしょう。今度は専業主婦から不満が出ます。国民の間に横たわる不公平感を助長しないように、いかに制度設計するか。極めて難題です」