ロッシェル・カップ氏は神宮再開発に反対活動「樹木1000本伐採は米国ではあり得ません」

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ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)

 国連加盟国がSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す中、日本の首都・東京では世界の潮流に逆行する計画が進められている。都内一等地の明治神宮外苑の再開発に伴い、敷地内にある743本もの樹木が伐採されようとしているのだ。問題にいち早く警鐘を鳴らしたのがこの人。米国人の視点からすると、再開発計画の中身も、決定プロセスも不合理だらけだという。

 ◇  ◇  ◇

 ――再開発計画によると、樹木が伐採される一方、球場やラグビー場が建て替えられ、オフィスや商業施設が入る高層ビルなどを新設。昨年2月に呼びかけた再開発に反対するオンライン署名は11万筆に達するなど、注目度の高さがうかがえます。問題に取り組むきっかけは何だったのでしょう。

 昨年2月の報道で、再開発計画が東京都の都市計画審議会に承認されたこと、石川幹子・中央大研究開発機構教授が「再開発で約1000本の樹木が伐採される」と指摘していることを知りました。一昨年の東京五輪開催前に代々木公園の樹木が過剰に剪定されるパブリックビューイング(PV)開設への反対署名を立ち上げたところ、多くの方が賛同してくれた。神宮外苑の大量の樹木が伐採される今回の計画は、PV開設の何千倍も大きな問題。ツイッターでフォロワーに「また署名を立ち上げましょうか」と聞くと「立ち上げてください」という意見が多かったので、声を上げなければ、と思ったのです。

 ――今月12日には、小池都知事に対し再開発計画の一時停止などを求める要望書を提出しました。事態は差し迫っていますね。

 東京都環境局は、神宮外苑地区の再開発について、昨年2月から周辺環境に与える影響を検証する環境影響評価(環境アセスメント)審議会で議論を開始。問題の多い計画案について、異例といえる回数と議論が交わされましたが、年末に急きょ総会が開かれ、事実上、環境アセスについての審議は終了してしまいました。今月20日に事業者が環境影響評価書を都に提出したと告示があり、同日に都知事が承認したことにより、計画は次の段階に移ります。都と事業者は、これ以上反対の声が上がらないうちに、大急ぎで着工に向かっているようですが、まだあきらめずに見直しを求めたいと思っています。

 ――もともと、再開発計画は2015年に浮上しましたが、詳細が都民に示されたのは21年12月のこと。しかも、計画の中身を確認できる縦覧期間はたった2週間でした。情報公開が不十分で、進め方にも問題がありました。

 私は米国に住んでいた時期に、再開発計画への反対運動に2回、参加したことがありますが、こんな強引な決定プロセスはあり得ません。まず、米国では環境アセスはプロジェクトの承認前に行われる。環境への影響を検証してから承認するのは当然のプロセスですよね。ところが、外苑再開発は承認後に環境アセスが実施された。この事実を知り合いの米国人に伝えると皆、驚きます。「それじゃあ意味がないじゃないか」と。さらに驚いたのは、再開発を進める主体の事業者自体が環境影響評価書をまとめたこと。米国では第三者のコンサルティング会社に頼むのが普通です。

 ――順序は逆だし、お手盛りということですね。

 環境影響評価書の内容にも驚きました。ほとんどデータが明記されず、「〇〇するように努力します」「××に気をつけます」と曖昧な表現ばかり。米国では第三者の企業がデータに基づいてハッキリと書くものです。その環境影響評価書を基にプロジェクトの社会的メリットと環境への影響を比較し、承認の可否を決めるのです。外苑再開発計画を巡る事後的な環境影響評価は“やってる感”の演出としか思えない。こんな非民主的なプロセスは、許されないことではないですか。

■小池知事の発言は矛盾だらけ

 ――中身も問題だらけです。

 小池知事は神宮外苑地区を「スポーツの拠点として発展させる」と言っていましたが、再開発で軟式野球場やフットサルコート、ゴルフ練習場などがなくなり、残るのは会員制テニスコートくらい。これが「スポーツの拠点」と言えるのでしょうか。矛盾しています。

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