岸田首相が旗振る「官製春闘」は敗北濃厚…価格転嫁はコスト上昇分の4割しかできず
岸田首相は経済界に「インフレ率を超える賃上げの実現」を強く要請し、「官製春闘」を演じているが、敗北が濃厚になってきた。エネルギーや原材料のコスト上昇分を十分に価格転嫁できない企業が少なくないからだ。
帝国データバンク(TDB)は価格転嫁に関する大規模調査を実施した。昨年12月16日から今年1月5日にかけて行い、全国1万1680社から回答を得た。
コスト上昇分について約7割の企業が「多少なりとも価格転嫁できている」と答えたが、どれだけ転嫁できているかを示す価格転嫁率は39.9%にとどまった。上昇分の6割は企業が負担しているのだ。
■業種によっては経費削減で賃下げも
業種別では「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(66.0%)や「化学品卸売」「紙類・文具・書籍卸売」(ともに62.8%)は6割超の転嫁が進んでいるが、サービス業は悲惨だ。「医療・福祉・保健衛生」(10.5%)、「娯楽サービス」(12.7%)、「運輸・倉庫」(20.0%)、「旅館・ホテル」(21.7%)で1~2割にとどまる。TDB情報統括部の窪田剛士氏が言う。