戦時体制が常態化して「非常時」が「常時」になると、人は己の狂気に気づかない
ウクライナ戦争はまもなく停戦になるだろう。このまま戦争状態が長引けば、アメリカをはじめとするNATO加盟諸国からの武器供給が先細りになり、戦争の継続が困難になるからだ。
ロシアの石油は世界シェアの10分の1、ガスはほぼ5分の1を占める。その供給が制限されていることで、西側諸国も苦しくなっている。本格的な冬の到来となれば、やがてウクライナの支援どころではなくなるはずだ。
それに、ロシアがこれまでに掌握したルガンスクなどの土地を返すことはないだろう。歴史をみれば、戦争によって奪った土地を奪った国が返還することはまずない。私が知る限りただひとつの例外は、アメリカが沖縄を日本に返還したことぐらいだ。
戦時体制が常態化して“非常時”が“常時”になると、人は己が狂気に陥っていることに気づかなくなる。第2次世界大戦下、旧ソ連軍は前線の味方の動きを監視し、敵前逃亡を図る者を銃殺する専門部隊「督戦隊」を配置した。世界に例のないことだった。ロシアは西欧の常識が通用しない相手だ。戻ってこない領土にこだわって、犠牲者を増やすべきではない。