欧米にも見劣りしない新国立劇場の舞台 日本のオペラ劇場は世界レベルになった
「ボリス・ゴドゥノフ」はマイナーな演目で耳慣れていないことも確かだし、あまり好きではないのだが、自分の勉強のために見に行った。それを抜きにしても、歌い手が振るわなかったのは事実だ。日本はまだまだ“オペラ後進国”である。
しかしながら、今回の舞台そのものは素晴らしかった。一切の無駄をそぎ落とした黒一色の冷たく無機質な舞台に、ネオンサインで縁取られた立方体が置かれ、場面ごとに形を変えていく。
原作はプーシキン。16世紀のロシア皇帝ボリス・ゴドゥノフを主人公とした政争と愛憎の物語が、みごとに現代劇として作り変えられていた。演出・美術・衣装・照明はすべて外国人スタッフだ。以前から“新国”は積極的に外国人の作り手を招いてきた。「なぜ日本人を使わないのか」という批判はあれど、先鋭的な舞台を作り続け、一定の評価を得てきた。世界を知る大野和士さんがオペラ芸術監督になってからは、さらにとがってきた。
今後ももっと外国人を呼んで、最先端の制作術を盗めばいいと思う。日本が本気で文化立国を目指すなら、「日本の劇場に行けば、思う存分、作りたい舞台が作れる」と、世界の演出家やデザイナー、指揮者や歌手たちに思わせるべきだ。