東京都と大阪府が生活支援で「米の支給」って戦時中? SNSでは「日本はどこへ…」と困惑の声
人口約1400万人の東京都、同880万人の大阪府という世界でも有数の大都市で「米の現物支給」が始まる。SNS上では「米の配給? 日本はどうなっているんだ」と困惑が広がる一方、「低所得者のギャンブルに使われる現金給付よりマシ」と賛否が分かれている。食糧の配給といえば、日本の戦時中を思い出すが……。
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東京都は生活に困窮する住民税非課税の約170万世帯を対象に、1世帯当たり25キロ(1万円相当)の米を配る「東京おこめクーポン事業」を来年1月にも始める。専用サイト、もしくはハガキで申し込んでもらい、食料品を直接自宅へ配送するという。配布する米の総量は実に約4万3000トン。米以外に野菜なども選べるよう検討している。
■総額16兆円超円の地方創生臨時交付金
同じく大阪府も米を現物支給する。吉村洋文知事は府内の18歳以下の子供約130万人に対し、所得制限を設けず1人当たり10キロ(5000円相当)を配る方針。財源には国の地方創生臨時交付金(これまでに総額16兆3760億円)が充てられるため、府としては懐をあまり痛めず住民支援が実施できる。大学生らに1万円分の地元産品を現物支給した愛知県津島市のように、こうした国の交付金を使った事業は増えている。
とはいえ、令和の時代に“米の配給”と聞き、感慨にふけってしまった人は多いはず。SNS上でも「食糧は配給、都庁職員は電気代削減でタートルネック着用って、戦時中かよ」「人は米のみにて生きるにあらず」「マスクの次は米の配給。日本は一体どこへ向かっているんだ?」といった困惑の声が広がっているのだ。
しかし、以前の景気が良かった日本ならいざ知らず、現在の日本は生活に困窮している家庭が多いのも事実。東京都の場合、米の支給対象になる住民税非課税世帯は約170万世帯。住民税が非課税になるのは、単身世帯なら年収100万円以下、夫婦なら同156万円以下、単身の年金生活者は同155万円以下で該当する。親元を離れて生活する学生もいるが、東京都に住む約722万世帯の実に4分の1の世帯が住民税非課税世帯というのだから驚く。
ちなみに、米を配るために都は12月補正予算で296億円を計上。他には「こころといのちの相談・支援 東京ネットワーク」に500万円、「霊感商法を含めた悪質商法対策事業」に5000万円といった予算が付けられている。
■配られる米は古米なのか?
では、低所得世帯に配られる米はどういうものなのか? 東京都では今回のものとは別に、賞味期限前の災害用備蓄食品を配布している。今回もこうした備蓄食品が充てられるのか。
「配布される米は普通にスーパーなどで売られているものと一緒です。ただし、産地などはご指定できません」(東京都福祉保健局の担当者)
一方、国も非常時に備え100万トン程度の備蓄米を運用している。通常は5年経つと牛や豚の家畜飼料として低価で売却されるものだ。
「東京や大阪のように備蓄米を配る予定はございません。5年の持ち越し米は飼料として売却していますが、その前にも『子ども食堂』へ配布したりしています」(農水省担当者)
米の配布(配給)というと、北朝鮮か、戦時下の日本を思い出してしまう。
1941年に「生活必需物資統制令」が国家総動員法の下で勅令として発令され、米や卵、酒などがまず大都市で配給制となった。米の一日の配給量は1941年当時で1~5歳が120グラム、6~10歳が200グラム、11~60歳まで330グラム、61歳以上が300グラムのみ。やがてその配給も滞り、せっけんなどの日用品までが配給の対象となっていった。
今の時代はさすがにお金さえ出せばスーパーやコンビニで自由に商品を購入できるとはいえ、「現物支給」という響きにはやはりインパクトがある。