料理研究家リュウジさんの壮大な目標とこだわり「肩書のない自分はバズるしかない」
リュウジ(料理研究家)
バズる──。主にSNSで急激に話題が拡散して多くの人の注目を集めることを意味し、今や日常語と化した言葉だ。簡単・爆速の“バズレシピ”が大受けし、ユーチューブチャンネル登録者約340万人、ツイッターフォロワー約240万人、レシピ本の売り上げ部数は累計120万部と圧倒的人気を誇る。「仕事はバズらせること」と豪語する料理研究家にバズへのこだわりと秘訣を大いに語ってもらった。
◇ ◇ ◇
──2017年、最初にツイッターでバズったレシピが「大根の唐揚げ」。当時は高齢者施設のコンシェルジュでした。
入居時に何千万円もかかる施設で、めちゃくちゃお金持ちが住んでいました。舌が肥えた人たちなのに、施設の食事は給食に毛が生えた程度。彼らの不満を聞き、コックの経験が少しあったので「料理をやらせてください」と先輩に言ったら、「やってみるか」と。月2回、料理を振る舞って喜ばれたレシピをツイートしていたんです。
──当時はバズるとは思っていなかった?
料理好きに届けばいいなって感じでした。その後も何度かバズってフォロワーが1万人を超えたころ、出版社から「本を出しませんか」と声がかかった。ところが、いざ編集者に会うと「フォロワー10万人になったら本を出せます」みたいなことを言われて。
──失礼ですね。
フザけんなと思ったけど、10万人は無理だと諦めた。1万人まで1、2年かかったし。ただ、だんだん腹が立って。僕が頑張った分の利益をノーリスクでかすめ取る思惑が透けて見えたから。じゃあ、10万人に増やして出版を断ってやろうかと。そこからツイートの戦略を立て始めました。
──バズを意識し出したのですね。
何万も「いいね」がついたツイートを全て並べて分析すると、かなり共通点があった。流行のネットスラングを使う、改行の仕方、ツイートの時間帯や目立つやり方などが見え、それらを複合させて料理につなぐと、見事にバズりました。
──バズの方程式が出来上がったと。
ツイートする前にどれくらいバズるか分かるようになったし、友人のツイートを「これはバズる」と予告したら、「いいね」が何十万もついたこともあります。
■全人類が自炊できるようになるのが目標
──さすがです。当時のバズレシピは“簡単・爆速”で誰もが思いつかないような食材の取り合わせが目立ちます。
理想形は「じゃがアリゴ」。もう、あのレシピを超えられないと思えるほどの傑作です。実際に作ってくれた人が最も多く、あれが初めての料理という人が何万人もいる。全人類に自炊できるようになってもらうのが僕の目標なので、功績はデカいです。
──それだけ料理の間口を広げたわけですね。
やっぱり、バズんなきゃ意味がないんです。発信力が認められなければ何もできない。そう悟って“闇落ち”していったけど、バズらなければ誰も知らない僕の料理に皆、興味ない。料理人でもないし、修業経験もないし。
──特に日本社会は肩書重視です。
どこそこの店で修業したって肩書だけで料理をおいしく感じてしまう。肩書のない自分はバズるしかない。おいしいド素人の料理は誰も食べないけど、フォロワー何百万人なら食べてくれる。最初はフォロワーを増やす「入り」の部分が大事で、最終的に「おいしい」が残る。適当においしくない料理を作っていたら、今の僕はない。