稲垣吾郎主演・映画「窓辺にて」で注目…“浮気妻”を責めない夫の愛は本物か
公開中の映画「窓辺にて」の主人公は、妻の浮気を知りながらショックを受けない自分に、ショックを感じて悩む。米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」でも主人公の男性は、妻の不倫現場を目撃しながらスルーしたことが話題を呼んだ。妻の浮気にキレない夫とは……。
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「窓辺にて」の上映時間は2時間半近い。しんどそうなイメージでTOHOシネマズ日本橋を訪れた。コロナ感染者数が増加傾向のせいか、客入りは3割ほどで、男女比は半々といったところ。年配の男性も少なくなかった。浮気妻を打ち出したCMに引かれたのだろうか。
映画は、文学賞を受賞した女子高生作家の会見シーンから始まる。主人公のフリーライターを演じる稲垣吾郎が、その女子高生作家をはじめ、いろいろな人と関わる過程で、人それぞれの小さな悩みが語られていく。
「ドライブ・マイ・カー」のスタッフを迎えて撮影されただけに、淡々としたセリフ回しは、2つの作品に共通する。奇をてらった演出はなく、大人の男性も十分楽しめるラブストーリーで、そんな悩みの極め付きが、CMになっている冒頭の夫の悩みだ。
妻の浮気を知りながらショックを感じない。それがショックで……。そんなことがあるのだろうか。
男女問題研究家の山崎世美子氏が言う。
「妻の浮気にショックを感じるかどうかはともかく、妻の浮気を見逃す夫はいます。そんな男性からの相談は決してゼロではありませんから」
なぜなのか? いくつか特徴があるという。山崎氏が続ける。
■「かわいそう」で離婚はできない
「そんな相談者の男性に共通するのは、妻への哀れみです。『もし離婚すると、妻は生活できなくなる。かわいそう』とおっしゃいます。そうは言っても、映画のようにショックゼロというケースはまれで、怒りを抑えながら妻の対応を見定めるのです。特に子供がいて幼いときや受験前などは子供への影響を考えて、表立って波風を立てないようにすることは珍しくありません。そんな妻へのチェック期間は、子供がいる場合、中学入学や受験終了などまでになります」
■熟年は遊びだけの関係なら黙認も
では、映画のように子供がいない、あるいは子育てが終わっているようなケースは?
「子供の有無に関係なく、妻の浮気をスルーできる夫は、概して妻を家政婦のようにとらえる傾向があります。妻に浮気されても『かわいそう』とマウントを取れるような立場だと、その傾向に拍車がかかる。食事や洗濯、掃除、ひいては育児についても、妻に肩代わりしてもらえば、夫の負担はほぼゼロ。最低限の生活保障で妻に家事や育児をやってもらえば、本当の家政婦を雇うより安上がりです。
それで、たとえば子供の受験が終わるまで育児と家事を妻に押しつけると、気楽な立場に味をしめ、受験が終わっても、そんな夫婦関係を続けるケースもあります。子育てを終えた熟年夫婦だと、遊びの浮気、肉体関係だけなら、黙認する夫は珍しくありません」(山崎世美子氏)
映画と現実は、やっぱりずいぶんと違った。夫が妻の浮気をスルーして“家政婦状態”で使い倒すとしたら、妻にとっては針のむしろ。妻は、夫から子供に浮気の事実をバラされるのが怖く、その関係を受け入れるという。
場合によっては、子供の成人後も、冷え切った夫婦関係が続くのはそのためだ。
映画で主人公は、自宅で仕事中にうたた寝をする妻にブランケットをかけたりする。それなりの会話があって、温かさを感じるが、現実はやっぱり厳しいようだ。