菅野志桜里氏が断言「解散命令請求はできる」「必要な資料は教団の外に十分にある」
菅野志桜里(弁護士)
銃撃事件発生から4カ月。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に対する包囲網は狭まっているように見える。霊感商法や高額献金などへの対策を議論した消費者庁の有識者検討会が先月まとめた報告書は、かなり踏み込んだ内容だったが、提言が実現するかは岸田政権のさじ加減ひとつだ。宗教法人法に基づく調査がなされ、解散命令の請求へと進んでいくのか。与野党が協議する被害者救済法案は、今度こそ弱きを助けるものとなるのか。尻すぼみの展開もあり得るのか。検討会メンバーを務めた検事出身の前衆院議員、菅野志桜里氏に聞いた。
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──消費者庁の検討会では、教団について「解散命令請求に値する事案」としながらも、「その前段として、これまで怠ってきた報告徴収・質問権を行使すべき」と主張されていました。
適法手続き保障、それに社会的な合意形成の観点から、先へ進むプロセスとして文科省が質問権を行使する方がよいと考えています。もちろん、法律上は質問権を行使せず、解散命令を請求することは可能です。実際、裁判所が解散命令を出したオウム真理教と明覚寺に対しては質問権は行使されていない。ただ、この2事案をめぐっては、刑事事件化する過程で警察や検察がしっかり捜査している。反論の機会も保障されていた。
一方、旧統一教会については、組織的な不法行為責任が認定された20件超の民事裁判などが主なベースとなります。捜査は入っておらず、必ずしも十分な反論の機会が保障されているとは言い切れない。そう考えると、手続き保障を尽くした結果の公正な判断として請求に向かった方がより適切ではないか、というのが、法律家としての感覚です。
──元政治家としての感覚ではどうですか。
調査もしないまま、解散命令の請求はできないと判断するのはおかしい。こうした声は世論からも政治家からも上がっています。キチッと調査した上で請求すべきであれば請求しましょう、というロジックの方が広く社会の合意形成がなされるのではないか。そう感じています。この間、旧統一教会をめぐる問題が一気に可視化された。メディアも政治も社会もこれまで放置してきた分、しっかりと向き合わなければいけないよね、という空気が醸成されています。
だからこそ、合意形成を積み重ねながら問題解決に向かって進んだ方がいい。それでこそ、岸田政権を動かすことができると思います。私は野党議員時代が長かったのもあって、バランス感覚ある世論の後押しこそが政治を動かすことを体感しました。「解散命令を請求せよ」の大合唱では、かえって政権がかたくなになってしまうのではないかという懸念もあります。
■最後までブレなかった消費者庁検討会
──消費者庁の検討会ではかなり盛んな議論が交わされ、提言もアグレッシブな内容です。
第1回会合で目的が定まり、最後までブレることはなかったですね。河野大臣が最初のあいさつで「消費者庁の担当の枠を超え、境界を定めずに自由な議論を」と発言したのは大きかった。その意味するところは、霊感商法を規制する消費者契約法改正に限らない法整備の必要性、そして根っこの問題である旧統一教会への対応策を示すこと。(教団の主たる集金方法が)壺のような物品販売から献金へ移行していると指摘される中で、契約でとらえきれない献金はどうするか。
分水嶺を明確にする方向で動きかけたのですが、契約であれ献金であれ、どちらも救済できるように法整備をした方が本来の目標を達成できるのではないか。そういうふうに手段については軌道修正を恐れないのも良かった。原則ライブ中継で、発言はほぼ議事録に残る。お手盛り発言、日和見発言をすれば厳しい目にさらされる。オープンな議論をとことん追求した検討会だったからこそ、できたことがありました。