芸人から金融マンへ、異色の経歴 傾聴力を生かしてカウンセラーから地域活動家まで
渡邉紀さん(45歳)本業=金融ファイナンス事業/副業=キャリアカウンセラー、地域復興・街づくり
渡邉紀さんの本業は金融業界の会社員。ファイナンス商品に関する企画、データ分析、マーケティング、事業戦略などを担当。キャリアコンサルタント(国家資格)、産業カウンセラーなどの資格試験合格を経て、キャリア相談を副業として行っている。
「金融業界にはもう20年以上います。貸金業法改正前にはお客さまのご自宅に返済相談に伺う仕事もありました。入社当初から、相手方の気持ちをくみ取った上で返済計画などを提案すると、結局のところ話が早く進むことがありました。神奈川県のある地域を担当したときにサポートした方に地元のお祭りで偶然再会したときは、感謝の言葉と共に大量のイカ焼きをごちそうになったこともあります(笑)」
渡邉さんは、18、19歳の時にお笑い芸人だった経験も持つ。当時から得意だった人間観察やコミュニケーション能力を生かし、人間心理に基づいたネタを作っていたそうだ。
就職後の2006年以降に金融業界は法律の抜本改正があり、渡邉さんの勤務先では社員に対してカウンセリングの研修を行うことになった。
「会社の研修を受けるまでは心理学やカウンセリングを体系的に学ぼうとは考えていなかったのですが、講師の先生にカウンセラーの才能があると言っていただいたんです。芸人時代のネタ作りや、お客さま対応で重要なひとつを言語化すれば『傾聴』。それはカウンセリングの基本でもあったんです。聴き手は話し手をジャッジするのではなく、受容と共感をベースにして、自分のことのように耳を傾けることが重要です。それを自然にやってきたことが評価されたことで興味を持ちました。11年に産業カウンセラーの資格を取得して副業を始めました」