”中内㓛に似てしまった”佐野眞一をノンフィクションの主流扱いしてはならない
佐野眞一(2022年9月26日没/享年75)
1992年に出した拙著「現代を読む 100冊のノンフィクション』(岩波新書)には佐野の『業界諸君!』を挙げ、こう書いた。
<「セプテンバー・セックス」という老人たちの性を扱ったレポートを含む『性の王国』(文春文庫)や、新聞の広告から現代のニッポンをのぞいた『紙の中の黙示録』(文藝春秋)など、意表を衝くノンフィクションをものしている佐野真一の作品で、私が最も好きなのは『業界紙諸君!』(中央公論社)である。その業界についてはだれよりもよく知っていながら、業界からの広告によって経営が成り立っているので、すべてを書けるわけではない宿命を業界紙記者は負っている」
以下略とするが、昨年出した『時代を撃つノンフィクション100』(岩波新書)には佐野の作品は入れなかった。
私には”大家”になってからの佐野の作品は精彩を欠いているように思えたからである。業界紙のタブーを知りながら、それに挑む者たちがタブーの正体を明かすところを描く場面には魅力があったが、表舞台の主役たちをクローズアップしようとする佐野には不自然な力みだけが目立った。