日本の会社からパワハラがなくならない理由…「面接1回即内定」の企業には要注意
防衛省のセクハラ問題で、被害者の元陸上自衛官・五ノ井里奈さん(23)が17日、加害者の男性隊員4人と面会。発生から1年2カ月が過ぎてようやく謝罪を受けた。解決に向けて大きく前進した格好だが、セクハラを含むパワハラがいまなおなくならないのはなぜなのか──。
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記者会見で五ノ井さんは「私の傷は一生の傷。罪を償いながら生きてほしい」と語った。4人とは防衛省の仲介で会い、個別に非公開で合計1時間ほど話すと、その中には涙を流したり、土下座したりした人もいて、防衛省の処分が決まり次第、退職することを明かしたそうだ。
五ノ井さんは、宮城県出身で、小学5年のときに東日本大震災で被災。献身的に支援してくれた女性自衛官に憧れて、2020年に自衛隊に。4人は所属部隊の先輩と上司だった。
昨年8月、山中訓練での宴会で3人から断続的に押し倒され、両足を広げられた状態で下半身を押しつけられるなどしたほか、日常的に抱きつかれることもあったことから、度重なるセクハラ被害を申告したが、認められなかった。
今年6月に退職し、実名で告発。ネット上で11万筆超の署名を集め、防衛省に事実解明を迫ったところ、防衛省は一転して内部調査の末、日常的なセクハラを認めた。防衛省では、4人を含む隊員の懲戒処分について調査が進む。さらに全隊員を対象にしたハラスメントに関する特別防衛監察も行っている。
■防止令には罰則規定なし
いわゆる「パワハラ防止法」は20年6月に施行され、今年4月からは中小企業も対象に含めて本格スタートした。それでもセクハラを含むパワハラがなくならないのはなぜか。ブラック企業アナリストの新田龍氏に聞いた。
「パワハラ防止法は、パワハラ基準の明確化とその周知徹底、発生した場合の懲戒処分の義務化、相談窓口の設置と周知などを盛り込んでいますが、罰則規定がありません。これが、ブラック企業が問題を放置する理由の一つ。もう一つは、労基署の対応です。被害者が労働基準法違反などで労基署に告発しても、企業が起訴されるのはまれで、起訴されて有罪判決を受けても、それに関連する罰則は多くが『6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金』で、法律が抑止力になっていないのです」