太平洋横断の原点は「何が何でもヨットマンになりたい」という強い気持ち
「世界最高齢での単独無寄港太平洋横断」と騒がれましたが、何も特別難しいことをしたわけではありません。
これまでの航海も何とかなりました。何度となくアクシデントに遭い、それを乗り越えることで体力も精神力も自然と身につきました。嵐を乗り越え、また次の嵐を受けると、だんだん強くなっていく自分が分かるんです。
例えば初めて仕事をするにあたって、相手とアポをとってから商談を進めますよね。同じような経緯を繰り返すことで、次第に慣れてきます。それと同じです。嵐が来れば、初めは震えます。
「勢力が倍になったらどうしよう」と精神的に追い込まれます。それを乗り越えてまた次の嵐、その次の嵐に遭遇すると、今まで経験している範囲内なら、これぐらいならまだ行けるようになる。慣れてくる自分がいるわけです。それは日常生活でもいえることです。
今回もいつものように日本に近づくにつれ、暖流の黒潮が大きく南に迂回する「黒潮大蛇行」や悪天候に見舞われました。小笠原諸島の北硫黄島付近では右へ舵を切っても、左へ切ってもヨットがバックしました。次の風が左から来るか、右から来るかによって作戦を変更するのですが、得てして風向きがイレギュラーになる。夜通し寝ずに頑張ってみましたが、ダメでした。バックする時はバックするものなのです。