学業の“借金”は平均324万円、返し終えるまで月1.7万円を15年…奨学金の現状と返還支援の動き
学生時代に借りた奨学金の平均額はおおよそ324万円。返済を終えるまでに平均で約15年かかっている。これが結婚や出産の障害ともなる中、奨学金の返還を支援する動きが企業や自治体の間で広がっている。借金漬けの社員や住民を貧困から救う手だてになるのか。
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「自分が奨学金を借りているなんて就職するまで知らなかった」
日本学生支援機構(JASSO)が奨学金の延滞者にアンケートしたところ、延滞者の約3割が申請時の申し込み手続きに本人が関わっていないことがわかった。借りたものを返すのは当たり前だが、当人にとっては寝耳に水のケースもある。
労働者福祉中央協議会の調査によると、日本学生支援機構から奨学金を借りた人の平均額は324.3万円。うち39歳以下の人に返済状況を聞くと、実に75.8%の人が「返済中」と回答。35~39歳の層でも「返済中」が61%もあり、「完済」は37%しかいない。
毎月の返済額は平均1万6880円で、返済期間は平均14.7年。仮に23歳から返済を始めても、完済時には38歳になっていることになる。
そもそも日本の奨学金制度はどうなっているのか。代表的な日本学生支援機構の奨学金には、貸与型の「第1種奨学金」(無利子)と「第2種奨学金」(有利子)があり、奨学生はどちらか一方、またはその併用ができる。海外留学のための奨学金には割り増しこそあるが、条件が同じため、特に円安の今はせっかくの海外留学に二の足を踏む要因ともなっている。返還義務のない給付型もあるにはあるが、これは対象が住民税非課税世帯など生活困窮者に限られているため使い勝手が悪い。
■米国は年収1800万円未満なら1万ドル免除
アメリカではバイデン大統領が年収12万5000ドル(約1800万円)未満の場合は1万ドル(約145万円)を返済免除すると発表したが、日本とは雲泥の差だ。
親世帯の経済状況も深刻。労働者福祉中央協議会の調査では、子供のうち長子が国公立大・大学院に通う世帯の年間教育費は約180万円。私立大・大学院になると約210万円に膨れ上がる。親の世帯年収が平均835万円(2020年)であることを思えば、「教育費に負担感がある」(63.7%)という声もうなずける。いきおい奨学金に頼らざるを得ず、子供に隠したまま手続きを済ませてしまう親が出てくるのかもしれない。
学生たちの生活も質素になっている。「学生生活調査」(2020年)によると、学費と生活費を足した学生生活費は年平均181万円(学費115万円・生活費66万円)で、コロナ前の前回調査(2018年)より10.1万円減少した。コロナ禍によってアルバイト収入がダウンした影響も大きい。