塚田穂高氏が語る 政治と宗教の関わり方「大票田は誤解。政策の浸透は甘く見てはいけない」

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塚田穂高さん(上越教育大大学院准教授)

 安倍元首相が凶弾に倒れて3カ月。反対の声が高まれど「国葬」は強行された。しかし、今もって旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党の癒着の全容は解明されない。ようやく召集された臨時国会で野党は追及を強めているが、反社会的集団との関係整理で終わらせてしまったら徒死になってしまう。宗教と政治の距離、関わり方もハッキリさせたい。どうあるべきなのか。宗教社会学の専門家に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──「国葬」をどう見ましたか。

 統一教会問題は別に検証されるべきですが、実施そのものに疑問を感じました。歴代首相にランク付けをすることにもなりかねない国家儀礼が今の時代に必要だったのか。明確な弔意の強制こそありませんでしたが、それでも国家儀礼の強圧性を軽く見てはいけない。賛否が割れる中での「やる/やらない」は表裏ではない。バランスが取れていないんです。「国葬」でなければ押し付けにはなりませんし、「税金の使われ方」という議論にもならなかった。

■国葬であらわ「ナショナリズムの宗教性」

 ──葬儀そのものが宗教性を帯びていることから、国葬は憲法20条(信教の自由と政教分離原則)に違反しているとの指摘もあります。

 国家儀礼は宗教性を内包しています。「ナショナリズムの宗教性」といっていい。無宗教形式とはいっても、葬儀から宗教性を消し去ることはできない。実際、式壇に遺影が飾られ、遺骨は象徴的に置かれ、黙祷や献花が行われました。国家神道的な音楽が流され、皇室の威光も示された。まさに時代錯誤で、国民の統合、あるいは一体感の演出が印象づけられた。

 ──自民党の二階元幹事長が「必ず良かったと思うはずだ。日本人ならね」と発言しましたが、「日本人」のひとくくりも気になりました。

 立憲民主党の玄葉元外相が「日本人の一般的な死生観などに鑑み、粛々と出席して追悼する」と言ったのも衝撃的でした。出席を否定はしませんが、発言の裏を返せば、反対したり、欠席する人は「日本人の死生観」を持っていないということになる。「文化宗教」とも言われるのですが、「日本人らしさ」を迫る場と化した国葬に空恐ろしさを感じました。「国のために」「日本人なら」と言われたら、公人の靖国参拝も改憲も批判できないのではないでしょうか。

■自民党「結果公表」はブラックリスト

 ──半世紀を超える自民党と旧統一教会の関わりについてはどうですか。

 宗教と政治の問題ではありますが、そこから入ると混乱する。本質は極めて問題のある集団と付き合い続け、その活動を守ってきたこと。ゆがんだ関係が最大のポイントです。自民党の「自己点検の集約」の結果公表は、項目と名前の羅列で、単なる「ブラックリスト」。

 どういう経緯で不適切な関わりを持ったのか、なぜ継続するに至ったのか、教団はどうやって近づいてきたのか、どんな政策実現を求められたのか。そういった質的な面がサッパリ分からない。しかも漏れがある。岸田首相が「関係を断つ」と決別宣言したのは評価できますが、内容が伴っていない。安倍元首相や細田衆院議長のケースを含め、関わりの検証を徹底させ、一刻も早く次のフェーズである被害回復に本腰を入れてほしいです。

 ──宗教と政治の関係に対する理解に濃淡があります。

 宗教団体の政治活動は原則的に自由です。政教分離原則に違反しているとの見方は誤解です。高校の政治経済の授業などでも習うことですが、憲法20条、89条は国及びその機関、自治体などが特定の宗教に肩入れすることを禁じている。その意味では、宗教法人靖国神社などへの首相や閣僚の参拝や公金支出などが本丸です。内閣法制局の見解も、宗教団体が特定の政党を支持すること、政治団体や政党を立ち上げて選挙に出ることを排除していません。

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