70代から楽しく元気に生きる「推し活」のススメ 高齢者施設でJリーグを応援する“効果”

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「推し活」で元気に! 高齢者施設で過ごす70代、80代、90代がプロサッカー選手に目を輝かせている。試合のある日は施設のホールなどに人が集まり一丸となってチームを応援。笑顔あふれる高齢者たちは何とも楽しそうだ。

  ◇  ◇  ◇

 ゴール! 大型テレビの映像に大興奮。手作りの花吹雪が舞うことも珍しくない。“推しメン”が活躍したら、これまた手作りのうちわをパタパタさせて喜ぶ。

■要介護度が3から1に

 そんな楽しい高齢者施設が増えている。富山市にある「天正寺サポートセンター」の黒崎幸子さん(82)は、カターレ富山(J3リーグ)に所属する大野耀平選手の大ファン。黒崎さんは、認知症で幻視とめまいの症状があったが、大好きな大野選手の応援で「要介護度が3から1に改善されたように見える」(施設職員)ほど元気になった。

 推し活の効果バツグンだ。

支えられるから支える存在に

 2020年12月にサントリーウエルネスがスタートさせた「Be supporters(サポーターズ)!」というプロジェクトが、高齢者施設とJリーグを結びつけている。

 プロジェクトが目指すのは、「高齢者施設で過ごす高齢者や認知症の人など普段は『支えられる』機会の多い人が、サッカークラブの“サポーター”になることで、クラブや地域を『支える』存在になっていくこと」。

 Jリーグの4クラブ(カターレ富山、レノファ山口FC=J2、川崎フロンターレ=J1、ヴィッセル神戸=J1)が参加する。各地域の「Beサポ!」に賛同した高齢者施設がパブリックビューイングなどで試合を中継。これまで40施設が参加。500人がJリーグの試合を観戦している。

86歳でスペイン語の勉強をスタート

 高齢者施設「オリンピア兵庫」の服部千恵子さん(86)はスペイン出身のイニエスタ選手(ヴィッセル神戸)が推しメン。何と、あまりにも好きすぎて「ゼロからスタートスペイン語」の本で勉強し、「VAMOS Iniesta(さあ、いこう、イニエスタ)」のメッセージを書いた。認知症だが、応援のときに一度着たユニホームを「これこないだ着ましたよね?」と言って、周りを驚かせた。

 サントリーウエルネス関係者はこう言う。

「例えばみんなで体操をしようとしても、一人一人がバラバラでうまくいかないこともあります。Jリーグの応援だと、それぞれが勝手に応援しながらもいつの間にか一体感が生まれます。『誰かを応援する』という目的もあるので、グッズを作ったりします。また次の試合を楽しみにすることで、時間軸で社会と結びつきます。それにJリーグは58チームあり、地元に根ざしているだけに、身近に感じる高齢者は多く、応援しやすいようです。ゴールを決めれば得点が入るルールも分かりやすく、高齢者に受け入れやすいスポーツといえるかもしれません」

試合会場に掲げられた横断幕

 今年9~10月にかけては「Beサポ!」の特別企画として「人生の先輩からのエール」(横断幕掲出)を実施。10クラブが参加した。高齢者施設で過ごす“人生の先輩”が選手らへメッセージを書き、それを横断幕にして試合会場に掲げる企画だ。

 最高齢は107歳で「命つきるまでサッカーを楽しみなさい」。今月18日に行われたFC町田ゼルビア(J2)の試合には15施設、357エールが集まった。

 実際に試合会場に駆けつけた高齢者施設もあり、現地で“推し活”を楽しんだ70代、80代、90代もたくさんいる。

■誰かとつながっている幸福感

「Beサポ!」は、サントリーウエルネスの沖中直人社長と、元NHKプロデューサーで認知症の人がホールスタッフで働く「注文をまちがえる料理店」の企画などで知られる小国士朗氏が話すなかで生まれたプロジェクトだ。

 幸福寿命を提唱する慶大医学部の伊藤裕氏は、「Beサポ!」についてこうコメントしている。

「主体的に誰かとつながっている幸福感が高齢者を元気にしているのでは。『推し』をつくることは、自分の分身のような存在を見つけ、気分的に高揚するという点で意味があること」

「ココロが動けばカラダも動く」

 慶大大学院健康マネジメント研究科の堀田聰子氏は、「この選手かっこいい! サッカーってけっこうおもしろい! というワクワクが隣の人を笑顔にする。ココロが動けばカラダも動く。動いてみるとまたココロが躍る。応援は、きっと高齢者自身の背中を押すことにもつながっている」。

 心と体が元気で、毎日楽しく過ごす。推し活はピッタリのようだ。 

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